最近はスマートフォンや携帯電話の利用が主流となってきており、固定電話の利用が少なくなっているようです。
固定電話に係る電話回線の利用を休止している企業もあるかと思います。
「電話加入権」は会計上、固定資産の範囲に含まれていますが、非減価償却資産に該当します。
非減価償却資産は、償却費を計上できない上、評価損の計上も原則認められていません。
電話加入権の取り扱い
電話加入権とは、NTT(日本電信電話株式会社)の固定電話契約者が、電話を利用できる権利です。
この電話加入権については、会計上、下記のように取り扱います。
電話加入権は、譲渡できる権利ですが、時間の経過で価値が減少するものではないため、会計上は減価償却をすることができない「無形固定資産」として計上します。
今のご時世では、ほとんど無価値だと思われていますが、価値が無いからといって償却をすることはできないため、購入時に資産の部に計上した金額が半永久的に残ってしまいます。
通常、資産というのは評価損が認められていますが、電話加入権については認められていません。
その理由は、電話加入権を保有している企業が多いため、減損処理を認めてしまうと、国税収入に影響を及ぼすためとも言われています。
評価損の検討
電話加入権とは、電話回線を利用する場合に必要な権利であり、施設設置負担金を支払う事で発生します。
施設設置負担金「電話加入権」の価額は、現在36000円程度です。
中古市場では、数千円程度で取引されることもあり、その価値は大幅に下落しているのが現状です。
電話回線が1年以上利用休止(遊休)状態にあれば、法人税法上、固定資産の評価損の計上が認められる「物損等の事実」のうち下記<2>の事実に該当し、評価損の計上が認められそうなものです。
<固定資産の評価損の計上事由>
<1>災害により著しく損傷したこと
<2>1年以上にわたり遊休状態にあること
<3>その本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと
<4>資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
この場合に、中古市場における電話加入権の下落は、インターネット回線の普及等に伴うものであり、会社が1年以上利用休止していたことで、その価値が下落したわけではありません。
以上より、電話加入権の価額の下落は、固定資産の評価損の計上が認められる「物損等の事実」のいずれにも該当しないことになります。
電話加入権の除却損については、取扱い等で示されていないことから、電話加入権の利用契約を解約したとしても、除却損の計上が認められるのか疑問視されることもあります。
しかし、利用契約の解約に伴い、電話加入権という権利は消滅しており、その消滅したはずの権利が、引き続き資産の部に計上されていることの方が問題ですので、電話加入権が消滅したのであれば、その解約の事実が生じた事業年度に除却損を計上します。
相続税評価
会計上の処理については、上記でお話しした通りとなりますが、次は相続税の評価についてみていきましょう。
電話加入権の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところにより評価します。
<1>取引相場のある電話加入権の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
<2> <1>に掲げる電話加入権以外の電話加入権の価額は、売買実例価額等を基として、電話取扱局ごとに国税局長の定める標準価額によって評価する。
なお、平成29年分の大阪府における電話加入権の標準価額は、1回線当たり1500円となっています。
また、特殊な番号(1番から10番まで若しくは100番のような呼称しやすい番号又は42番、4989番のような誰もがいやがる番号をいう。)や上記の方法で評価することが不適当と認められる電話加入権の価額については、上記の方法で評価した価額を基とし、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して、適宜増減した価額によって評価します。
・2018年7月2日 公開