来年から改正さ れる公社債等の税金について
「平成28年から金融商品の税制が大きく変わります」
○ 「特定公社債等」の譲渡益が課税対象に!
これまで非課税扱いだった特定公社債等の譲渡益に20%の税率による所得税が課税されます。さらにその所得税額に2.1%の復興特別所得税がかかります。以下の説明ではこの復興税については省略させていただきます。
「特定公社債等」は下記の「特定公社債」と「公募公社債投資信託等」の総称です
「特定公社債」は、国債・地方債・外国国債・外国地方債・公募公社債・上場公社債など
「公募公社債投資信託等」は、公募公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託・公募社債的受益権など
以下、公社債等といいます。
○ 金融所得課税の一体化
上記の様に、公社債等が課税対象になったことにより、公社債等の税制は上場株式等の税制と同様に組み込まれて、全てが統一されます。
これにより、公社債等の利子、分配金、譲渡損益、償還差損益が、上場株式等の譲渡損益、配当と損益通算可能になります。
「公社債等の譲渡損益の課税による影響」
1 売却益が見込まれるケース
外貨MMFとは、海外の安定した債権で運用する投資信託ですが、これまでは為替差益も含めて譲渡益に税金はかかりませんでした。しかし、今回の改正で、来年以降の譲渡益には20%の所得税がかかります。
Ex.3年前の円相場が80円の時に、ドル建てMMFを1万ドル購入していたら?
現在、対ドル円は120円の円安で一服しているので、為替差益だけでも40万円ほどの含み益があることになります。これを年内に売却すれば税金はかかりませんが、来年以降に売却すると20%の所得税がかかってきます。
これは単純な条件ですが、年内に売却して非課税のうちに利益を確定した方が良いかもしれませんね。
2 売却損が見込まれるケース
Ex.新興国通貨建て利付債などで、現在、含み損をかかえている債権を持っていたら?
年内に売却すると、税金の計算では、その損失は無かったものとして切り捨てられます。もし、来年以降に売却した場合は、その他の債券や上場株式等の配当や譲渡益と損益通算できます。
このように含み損をかかえている場合は、来年以降に売却して、その損失を上場株式等の利益から差し引くのも一つの方法かと思います。
Ex.公社債等は年内に売却か?それとも来年以降に売却か?
公社債等で売却益→年内に売却→非課税
公社債等で売却益→来年以降に売却→20%の税金
公社債等で売却損→年内に売却→他の利益と相殺なし
公社債等で売却損→来年以降に売却→上場株式等の利益と相殺あり
「ゼロクーポン債の場合」
ゼロクーポン債とは、米国債などで、利息が付かない代わりに、購入価格が低額に設定されて、満期に額面金額を受け取る仕組みの割引債の一種です。
現行は、売却して利益がでたら、総合課税の譲渡所得として課税されますので、50万円の特別控除を使えます。つまり50万円までの利益なら税金はかかりません。
50万円の特別控除が使えるので、年内に売却した方が得のようですが、もし利益が50万円を大きく超えるような場合はどうでしょう?
キーワードは「総合課税」にあります。総合課税とは、この売却益は、給与所得や事業所得などと合算して、累進税率が適用されることです。
給与所得などが多くて税率が20%以上になる方は検討が必要になってきます。
仮に、税率が30%の方は、今年中に売却して、売却益も他の所得同様に30%の税金がかかってしまうよりは、来年以降に売却して、売却益については20%の分離課税を適用する方が有利になる場合もあります。
「公社債等も特定口座に」
公社債等は、上場株式の税金と同様の扱いになるので、特定口座を開設して公社債等の利子や売却益と、上場株式等の配当や売却益と合わせて計算できるようになります。
一定の要件のもと、現在保有している公社債等についても、来年以降、特定口座に受け入れることができます。
以上が、公社債等の税制改正の概要です、今回の改正は、現行は非課税のモノに、税金がかかってくるという非常に大きな改正です。
公社債等をお持ちの方は、一度、検討されてみてはいかがでしょうか。
・2015年11月6日 公開