税務お役立ち情報

「災害に関する税制上の措置(以下、「災害税制」とします)」をご紹介して参ります。
なお、災害税制は非常に広範にわたるため、一部かつ大まかなご説明にとどまります。

 

災害とは

災害により被害を受けられた皆様におかれましては、心からお見舞い申し上げます。

 

災害税制を検討する際に注意するべき点は、各措置ごとに適用要件となる災害の範囲が異なることです。

まず、「災害」という場合には、次のものをいいます。

 

(1)震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火、その他自然現象の異変による災害

(2)鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害

(3)害虫、害獣その他の生物による異常な災害

また、「災害等」という場合には、次のものも含まれます。

(4)盗難

(5)横領

なお、詐欺や恐喝は、残念ながら含まれません。

 

さらに「自然災害」と言う場合は、上記(1)のうち、「被災者生活再建支援法」の適用を受ける災害をいいます。

加えて「特定非常災害」という場合もあり、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいいます。

 

なお、本稿作成時点で指定されている特定非常災害は下記の4件です。

・1995(平成7)年  兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
・2004(平成16)年 新潟県中越地震(新潟県中越大震災)
・2011(平成23)年 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
・2016(平成28)年 熊本地震

 

災害にあったからといって、全ての災害税制が受けられるわけではないということですね。

 

災害税制の概要

災害にあった場合、次の各種措置を受けることができます。

 

(1)申告などの期限の延長・納税の猶予

① 災害等の理由により申告・納付などをその期限までにできないときは、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲でその期限を延長することができます。届出書や申請書等の提出期限も同様に延長することができます。

 

② 災害により相当な損失を受けたことにより、その復旧に必要な資金の借入れのために使用する場合には、納税証明書の交付手数料は不要です。

 

③ 災害等により財産に相当の損失を受けたときは、所轄税務署長に申請をすることによって納税の猶予を受けることができます。

 

(2)所得税の全部又は一部の軽減

① 災害により住宅や家財などに損害を受けた場合は、確定申告を行うことで所得税法の雑損控除又は災害減免法の適用を受けることができます。

 

② 住宅ローン等で住宅用家屋の新築等をした場合には、一定の要件を満たすことにより、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることができますが、災害により住宅用家屋が被害を受けた場合には、適用期間や重複適用の特例を受けることができます。

 

(3)災害により被害を受けた場合の法人税の特例

① 災害のあった日から1年以内に終了する事業年度において、災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度開始の日前1年(青色申告書の場合には2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、繰戻し還付を請求することができます。

 

② 災害のあった日から6月以内に終了する中間期間において、災害損失金額がある場合には、仮決算の中間申告において、控除しきれなかった所得税額の還付を受けることができます。

 

③ 特定非常災害として指定された災害については、発生日から同日の翌日以後5年を経過する日までの期間内に、被災代替資産等の取得等をして事業の用に供した場合には、特別償却をすることができます。

 

(4)消費税簡易課税制度の適用(不適用)に関する特例

災害等が生じたことにより被害を受けた事業者が、当該被害を受けたことにより、消費税簡易課税制度の適用を受けることが必要となった場合、又は受けることの必要がなくなった場合には、通常は適用を受ける課税期間開始の日の前日までに届出書を提出しなければなりませんが、税務署長の承認を受けることにより、当該災害等の生じた日の属する課税期間から、消費税簡易課税制度の適用を受けること、又はやめることができます。

 

このほかにも相続税・贈与税、登録免許税、自動車重量税や印紙税などについても災害税制が設けられています。

 

災害税制の適用を受けるには

上記の災害税制の適用を受けるには、ほとんど全ての措置において確定申告書や中間申告書、申請書の提出が必要になります。

 

提出期限については、通常の提出期限経過後でも適用できるものもありますが全部ではなく、また、「災害等がやんだ日から2月以内」という具合に、いつまでも待ってくれるという訳にはいきません。

 

さらに、り災証明書や登記簿謄本その他一定の書類の添付が必要になる場合もありますので、適用に当たっては、くれぐれも注意が必要です。

 

今回、災害税制についてご紹介させて頂きましたが、ほんの一部です。詳細については、最寄りの税務署や税理士等にご相談ください。

 

災害は被災者に物理的・精神的に多大な損害を与えます。また、被災者のご家族・ご親族にも大きな影響を及ぼします。
税制上の優遇措置以外にも多くの支援策が講じられていますが、それどころではないという方がほとんどだと存じます。そんな時、税理士が少しでもお役に立てれば幸甚です。

 


・2017年11月28日 公開


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