税務お役立ち情報

現行の広大地について

広大地とは

広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して『著しく地積が広大な宅地』で、「都市計画法第4条第12項に規定する開発行為」を行うとした場合に「公共公益的施設用地」の負担が必要と認められるものをいいます。

ただし、「大規模工場用地」に該当するもの及び「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」は除かれます。

広大地を適用した場合の最大のメリットは、土地の相続税評価額が下がることにより、相続税額を減少させることです。

 

(注)
1.都市計画法第4条第12項に規定する開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。

 

2.公共公益的施設用地とは、道路、公園等の公共施設の用に供される土地及び教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地をいいます。

 

3.大規模工場用地とは、一団の工場用地の地積が5万平方メートル以上のものをいいます(ただし、路線価地域においては、大工場地区として定められた地域に所在するものに限ります。)。

 

4.中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものとは、その宅地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいいます。

 

広大地評価方法

広大地の価額は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価します。

1.広大地が路線価地域に所在する場合
広大地の価額=広大地の面する路線の路線価×広大地補正率×地積
※広大地補正率=0.6-0.05×(広大地の地積÷1,000m2)
ただし下限は0.35

 

2.広大地が倍率地域に所在する場合
その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした
場合の1m2当たりの価額を、上記(1)の算式における「広大地の面する
路線の路線価」に置き換えて計算します。

 

広大地の問題点

現行の広大地評価には次のような問題点がありました。

1.適用要件が抽象的なものであるため、専門家の間でも判断がわかれることがあり、審査請求や訴訟に発展するケースが多発していた。

 

2.個別の土地の形状等とは関係なく、面積に応じて比例的に減額するものであるため、この評価額が実際の取引価額を大きく下回る場合が生じていた。

 

平成29年度の税制改正/広大地評価の見直し

改正内容

平成29年度税制改正大綱においては、現時点においては以下の通りとなる予定です。

 

1.現行の財産評価基本通達(以下「評価通達」という)24-4《広大地の評価》は廃止する。

2.これに代わるものとして同通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》を新設する。

 

内容としては、「地積規模の大きな宅地」で、「一定の地区」に所在するものの価額は、評価通達《奥行価格補正》から前項(20《不整形地の評価》)までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、以下の算式により求めた「規模格差補正率」を乗じて計算した価額によって評価する。

 

「地積規模の大きな宅地」とは?・・・

「地積規模の大きな宅地」とは、三大都市圏においては500m2以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000m2以上の地積の宅地で、次のいずれかに該当するものを除く。

a:市街化調整区域に所在する宅地

b:工業専用地域に所在する宅地

c:容積率が400%(都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地

 

「一定の地区」とは?・・・

評価通達14-2《地区》の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在する宅地であること。

 

「規模格差補正率」・・・

規模格差補正率=((A×B+C)/(A))×0.8

A:地積規模の大きな宅地の面積

 

B:三大都市圏に所在する宅地か否か及び地積により与えられる係数
(例 三大都市圏内の500m2以上1000m2未満の土地の場合・・0.95)

 

C:三大都市圏に所在する宅地か否か及び地積により与えられる係数
(例三大都市圏内の500m2以上1000m2未満の土地の場合・・25)

 

3.評価通達21-2《倍率方式による評価》に次の内容が追加された。
倍率地域に所在する「地積規模の大きな宅地」の価額については、本項本文の定めにより評価した価額が、その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1m2当たりの価額を路線価とし、かつ、その宅地が普通住宅地区に所在するものとして、20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に準じて計算した価額を上回る場合には、20-2に準じて計算した価額により評価する。

 

4.評価通達24-6《セットバックを必要とする宅地の評価》において、広大地補正率により評価する場合には、本項(24-6)の定めは適用しない旨のただし書部分を削除する。

 

5.評価通達40-2《広大な市街地農地等の評価》、49-2《広大な市街地山林の評価》及び58-4《広大な市街地原野の評価》は「削除」する。

 

6.以上の改正は、平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用する。

 

改正のポイント

今回の改正のポイントを簡単にまとめると以下の通りである。

1.適用要件が大きく簡素化された。

2.広大地について各土地の個々に応じて形状等の事情補正を規模格差補正率により反映させることとした。

3.規模格差補正率は、市街地農地等、市街地山林及び市街地原野についても適用することができる。

4.規模格差補正率は、倍率地域においても適用することができる。

 

広大地評価の見直しのまとめ

広大地評価が見直されることとなった理由は、現行の広大地評価における以下に掲げる問題点を是正することが目的と考えられます。

 

1.現行の広大地評価は、面積に応じて比例的に減額する評価方法で、その土地の形状が考慮されておらず、土地の形状次第で実際の取引価格と相続税評価額が大きく乖離することがあること。

 

2.富裕層の節税対策に利用されている事例が多数あることから、租税公平主義の見地にそぐわないこと。

 

3.実務上、広大地評価に関する適用要件が明確ではない部分が多かったため、納税者と課税庁との間において見解の相違により広大地評価が否認される可能性があり、専門家からの立場を持ってしても適用可否の判断が難しかったこと。

 

今回の改正により納税者が不利となるケースは、先にも述べたように、今回の改正により広大地における補正率が下がることにより、減額効果が現在の広大地評価による効果よりも小さくなることが考えられます。また、改正後の基準により広大地から外れてしまうというケースも考えられるのではないでしょうか。

 

駆け込みというのは、あまりお勧めはしませんが、現行の広大地評価が改正後よりも有利であることが明らかな場合には、平成29年12月31日までに「贈与」することを検討した方が良いというケースもあるでしょうね。

※当然ですがその場合には、多角的かつトータル的に考える必要はあるでしょうが。

 


・2017年8月29日 公開


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