税務お役立ち情報

法定相続情報証明制度って何?

法定相続情報証明制度とは、不動産や預金などの遺産相続の手続きを簡素化する為に新たにできた制度の事です。平成29年5月29日からサービスが開始しました。

この制度は戸籍などの必要書類一式を法務局へ提出して確認を受ければ、法定相続人であることを示す証明書が無料で発行される仕組みです。この証明書は偽造防止措置の施された専用紙で作成された、相続証明書を発行する制度です。

 

今までは、不動産の相続登記、相続税の申告、亡くなった人の預貯金の払い戻し、株式の名義書き換え、保険会社への保険金請求などは、それぞれ管轄する各地の法務局、税務署、銀行、証券会社、保険会社などへ必要書類を別々に提出し、順番に審査を受けねばならなく、手続きが煩雑で時間もかかりました。
新制度では、相続証明書の写しを必要枚数だけ一度に入手できることから、手続きを短期間で済ますことができ、相続人や関係機関の負担を軽減できることになりました。具体的なこの制度のメリットは以下の3点です。

 

「法定相続情報証明制度」の3つのメリット

①書類の簡素化

この制度を利用すると被相続人と相続人の戸籍の内容を一枚にした「法定相続情報一覧図の写し」が発行され、相続手続きの際に戸籍一式の代わりにこの「法定相続情報一覧図の写し」を1枚準備するだけで良くなります。相続の際の不動産の名義変更だけでなく、金融機関での預金の払い戻しや名義変更などにも利用できます。

 

②金銭的負担の軽減

被相続人が複数の金融機関で口座を持っていたり、保険会社や証券会社と契約をしていたり、土地を所有していた場合には、複数の相続手続きを行う必要があります。戸籍一式は有料であるためたくさん準備をするとお金がかかるため、一式一部だけ準備して順番に手続きをしていくこともあります。しかし、「法定相続情報証明制度」で発行される「法定相続情報一覧図の写し」は無料であることから何枚準備しても金銭的な負担がかかりません。

 

③時間の短縮

複数の機関で相続手続きを行う際、戸籍一式を提出して返却を待ち、返却されたら別の機関へ提出して返却を待つといった形でひと通りの手続きが終わるまでに相当の時間を要することもあります。しかし、戸籍一式の代わりに使用できる「法定相続情報一覧図の写し」を必要な枚数用意しておけば、返却を待つことなく複数機関での手続きを同時に進めることができ、相続手続の時間短縮ができます。

 

法定相続情報証明制度の具体的な手続き

法定相続情報証明制度の具体的な手続は,次のとおりです。

 

(1)必要書類の収集
(2)法定相続情報一覧図の作成
(3)申出書の記入,登記所へ申出

 

手続を進める前に確認が必要な事
①本制度を利用することができる人は,被相続人の相続人(又はその相続人)です。また,この制度の申出は,申出人からの委任によって,代理人に依頼することができます。委任による代理人については,親族のほか,弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士及び行政書士が行う事が出来ます。

 

②被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど,戸除籍謄抄本を提出することができない場合は,この制度を利用することができません。

 

(1)必要書類の収集
手続に当たって,用意する必要のある書類は,以下の通りです。
「必ず用意する書類」
①被相続人の戸除籍謄本
②被相続人の住民票の除票
③相続人の戸籍謄抄本
④申出人の氏名・住所を確認することができる公的書類

 

「必要となる場合がある書類」
⑤各相続人の住民票記載事項証明書
⑥委任状による代理人が申出の手続をする場合
⑥-1 委任状
⑥-2 (親族が代理する場合)申出人と代理人が親
族関係にあることが分かる戸籍謄本
⑥-3 (資格者代理人が代理する場合)資格者代理
人団体の所定の身分証明書の写し等
⑦戸籍の附票

 

(2)法定相続情報一覧図の作成
被相続人及び戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図を作成します。

 

(3)申出書の記入,登記所へ申出

申出書に必要事項を記入し,(1)で用意した書類,(2)で作成した法定相続情報一覧図と合わせて申出をします。
申出をする登記所は,以下の地を管轄する登記所のいずれかを選択することが可能です。
(1)被相続人の本籍地
(2)被相続人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)被相続人名義の不動産の所在地

 

なお,申出や一覧図の写しの交付(戸除籍謄抄本の返却を含む)は,登記所に行くほか,郵送によることも可能です。郵送による一覧図の写しの交付(戸除籍謄抄本の返却)を希望する場合は,その旨を申出書に記入した上,返信用の封筒及び郵便切手を同封してください。窓口で受取をする場合は,受取人の確認のため,「申出人の表示」欄に押印した印鑑を持参してください。

 

平成30年度税制改正により変わった点

相続税の申告においては、
(1)絶対に提出しなければならない書類
①被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
②遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
③相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
(2)特例の適用を受ける為に提出しなければならない書類
①住民票の写し
②戸籍の附表の写し等
(3)計算した内容を証明する為任意に提出する資料
①土地の図面や履歴事項全部証明等

 

今回の改正は(1)①の資料です。そもそもなぜ必要かと言うと相続税の計算では、誰が相続人で、それが何人いるのか、そのうちの何人が実子なのか(相続人の中に養子はいないか)、相続を放棄した人はいないか、相続分はどうなるのかといった情報がないと正しい相続税が計算できません。提出する事により、正しい計算をやっている事を税務署に対して証明するために(そして税務署もそれを確認するために) 被相続人の相続人の情報を公的に証明する書類として、戸籍一式が添付書類として指定されてきました。

平成30年度の税制改正により、次の様に改正されました。
平成30年4月1日以後は、(a)の書類に代えて、
(b)又は(c)のいずれかの書類を添付することができる様になりました。但し引続き、(a)の書類も添付できます。)
(a)「戸籍の謄本」で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの。
(b)図形式の「法定相続情報一覧図の写し」子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかがわかるように記載されたものに限ります。
(注)被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー機で複写したものを含みます。)の添付も必要です。
(c)(a)又は(b)をコピー機で複写したもの。

 

広大地評価について(改正前)

広大地の評価とありますが、あくまで財産評価であり相続や贈与の世界の話です。
土地の評価の中で、広大地に該当すると評価がさがるのです。
この規定の適用は、戸建て住宅の販売を前提とした土地の話で、マンション敷地の対象となる土地はそもそも対象外です。

 

戸建て住宅の販売を行う場合、例えば一般的なサラリーマンに住宅を販売する事を考えた場合、1,000㎡の土地に1個の住宅を建てて販売しても、単価が高すぎて購入できません。

そのような住宅は特定の人にしか販売できません。サラリーマンに住宅を購入してもらうためには、土地を切り売りしてそこに住宅を建てて販売価額をさげなければなりません。

その様な戸建て住宅販売の対象となる広い土地については、不動産業者が土地を仕入れて、開発道路と言われる道路をその土地内に作ったり、広告宣伝費や人件費などの販売コストを掛けなければなりません。

以上から広い土地に住宅を建てる場合、必然的に多額の費用が掛かります。この費用に当たる部分を考慮して土地の評価を減少させる規定です。

 

但し広ければ全ての土地が広大地に該当し評価減を受けることができるのでは無く、一定の条件に該当する土地についてのみ、広大地に該当します。

広大地に該当すると最大65%土地の評価が減少します。

 

(一定の条件)

①大規模工場用地に該当しない。

②マンション適地に該当しない。

③その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく面積が広大。

④開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要。

 

しかし上記の規定は、適用要件が不明確な部分が多々有り、その解釈を巡って、国税不服審判所や裁判所で争われた事例が数多く存在します。
また取引価格と大きく乖離し、富裕層の節税策として利用されている事もあった為、今回平成29年度の税制改正で広大地の規定が改正されました。

*上記の規定は平成29年12月31日までの相続・贈与に該当するものです。

 

地積規模の大きな宅地の評価について

今まで広大地の評価と呼んでいたものは、改正により「地積規模の大きな宅地の評価」と言う呼び名にかわり、平成30年1月1日以降の相続・贈与について一定の条件は下記に記載する規定に変更になりました。

 

(一定の条件)

①対象となる宅地の地積が三大都市圏においては500㎡以上、三大都市圏以外においては1,000㎡以上。

三大都市圏とは国税庁のホームページに記載されていますが、わかりやすく言いますと、首都圏・近畿圏・中部圏の事です。

 

②普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に限る。路線価方式により評価する地域については、国税局長が次に掲げる地区を定めています。
(1) ビル街地区

(2) 高度商業地区

(3) 繁華街地区

(4) 普通商業・併用住宅地区

(5) 普通住宅地区

(6) 中小工場地区

(7) 大工場地区

 

改正前については(7)大工場地区や都市計画法で定める用途地域が工業専用地域以外は対象となっていましたが、改正によって地区区分が明確にされました。

 

③市街化調整区域は原則として適用できない。

簡単に言いますと市街化区域と市街化調整区域があって、市街化区域は都市化を進める地域で、市街化調整区域は都市化を抑制する地域です。
市街化調整区域は原則として建物の建築ができませんので戸建て住宅の販売を目的とした広大地の適用はできません。
但し、都市計画法の規定で開発行為を許可することができる地域は除かれています。

 

④指定容積率が400%(東京都特別区においては300%)未満の地域に限る。

容積率とは建物の延べ床面積のその敷地に対する割合のことで

例えば容積率200%とは敷地100㎡の土地に200㎡の建物を建築した場合のことで、指定容積率とはその上限が定められている事です。

 

上記の規定に該当すると広大地の評価減の適用ができます。

 

具体的な計算

では具体的に広大地の評価減の計算をしてみます。

 

【例】

正面路線価が100,000円、土地の間口50m、奥行き40m、整形地で面積が2,000㎡、指定容積率は300%で大阪の普通住宅地区にあったとします。

 

(改正前)
広大地の価額=広大地の面する路線の路線価×広大地補正率(*)×地積

(*)広大地補正率=0.6-0.05×広大地の地積/1,000㎡

土地の評価

①広大地の適用が無い場合
100,000円×0.92×2,000㎡=184,000,000円

 

②広大地の適用がある場合
100,000円×0.5×2,000㎡=100,000,000円

改正前の適用では広大地に該当すると、土地の評価は半分近くになりました。

 

(改正後)

土地の評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積

となり、

 

100,000円×0.92奥行価格補正率=92,000円

92,000円×0.75規模格差補正率=69,000円

69,000円×2,000㎡=138,000,000円

 

改正後は改正前代比べ、38,000,000円土地の評価額が増加する事になります。

 

以上広大地の評価は専門家にご相談下さい。

現行の広大地について

広大地とは

広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して『著しく地積が広大な宅地』で、「都市計画法第4条第12項に規定する開発行為」を行うとした場合に「公共公益的施設用地」の負担が必要と認められるものをいいます。

ただし、「大規模工場用地」に該当するもの及び「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの」は除かれます。

広大地を適用した場合の最大のメリットは、土地の相続税評価額が下がることにより、相続税額を減少させることです。

 

(注)
1.都市計画法第4条第12項に規定する開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。

 

2.公共公益的施設用地とは、道路、公園等の公共施設の用に供される土地及び教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地をいいます。

 

3.大規模工場用地とは、一団の工場用地の地積が5万平方メートル以上のものをいいます(ただし、路線価地域においては、大工場地区として定められた地域に所在するものに限ります。)。

 

4.中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものとは、その宅地について経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいいます。

 

広大地評価方法

広大地の価額は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価します。

1.広大地が路線価地域に所在する場合
広大地の価額=広大地の面する路線の路線価×広大地補正率×地積
※広大地補正率=0.6-0.05×(広大地の地積÷1,000m2)
ただし下限は0.35

 

2.広大地が倍率地域に所在する場合
その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした
場合の1m2当たりの価額を、上記(1)の算式における「広大地の面する
路線の路線価」に置き換えて計算します。

 

広大地の問題点

現行の広大地評価には次のような問題点がありました。

1.適用要件が抽象的なものであるため、専門家の間でも判断がわかれることがあり、審査請求や訴訟に発展するケースが多発していた。

 

2.個別の土地の形状等とは関係なく、面積に応じて比例的に減額するものであるため、この評価額が実際の取引価額を大きく下回る場合が生じていた。

 

平成29年度の税制改正/広大地評価の見直し

改正内容

平成29年度税制改正大綱においては、現時点においては以下の通りとなる予定です。

 

1.現行の財産評価基本通達(以下「評価通達」という)24-4《広大地の評価》は廃止する。

2.これに代わるものとして同通達20-2《地積規模の大きな宅地の評価》を新設する。

 

内容としては、「地積規模の大きな宅地」で、「一定の地区」に所在するものの価額は、評価通達《奥行価格補正》から前項(20《不整形地の評価》)までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、以下の算式により求めた「規模格差補正率」を乗じて計算した価額によって評価する。

 

「地積規模の大きな宅地」とは?・・・

「地積規模の大きな宅地」とは、三大都市圏においては500m2以上の地積の宅地、それ以外の地域においては1,000m2以上の地積の宅地で、次のいずれかに該当するものを除く。

a:市街化調整区域に所在する宅地

b:工業専用地域に所在する宅地

c:容積率が400%(都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地

 

「一定の地区」とは?・・・

評価通達14-2《地区》の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在する宅地であること。

 

「規模格差補正率」・・・

規模格差補正率=((A×B+C)/(A))×0.8

A:地積規模の大きな宅地の面積

 

B:三大都市圏に所在する宅地か否か及び地積により与えられる係数
(例 三大都市圏内の500m2以上1000m2未満の土地の場合・・0.95)

 

C:三大都市圏に所在する宅地か否か及び地積により与えられる係数
(例三大都市圏内の500m2以上1000m2未満の土地の場合・・25)

 

3.評価通達21-2《倍率方式による評価》に次の内容が追加された。
倍率地域に所在する「地積規模の大きな宅地」の価額については、本項本文の定めにより評価した価額が、その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1m2当たりの価額を路線価とし、かつ、その宅地が普通住宅地区に所在するものとして、20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に準じて計算した価額を上回る場合には、20-2に準じて計算した価額により評価する。

 

4.評価通達24-6《セットバックを必要とする宅地の評価》において、広大地補正率により評価する場合には、本項(24-6)の定めは適用しない旨のただし書部分を削除する。

 

5.評価通達40-2《広大な市街地農地等の評価》、49-2《広大な市街地山林の評価》及び58-4《広大な市街地原野の評価》は「削除」する。

 

6.以上の改正は、平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用する。

 

改正のポイント

今回の改正のポイントを簡単にまとめると以下の通りである。

1.適用要件が大きく簡素化された。

2.広大地について各土地の個々に応じて形状等の事情補正を規模格差補正率により反映させることとした。

3.規模格差補正率は、市街地農地等、市街地山林及び市街地原野についても適用することができる。

4.規模格差補正率は、倍率地域においても適用することができる。

 

広大地評価の見直しのまとめ

広大地評価が見直されることとなった理由は、現行の広大地評価における以下に掲げる問題点を是正することが目的と考えられます。

 

1.現行の広大地評価は、面積に応じて比例的に減額する評価方法で、その土地の形状が考慮されておらず、土地の形状次第で実際の取引価格と相続税評価額が大きく乖離することがあること。

 

2.富裕層の節税対策に利用されている事例が多数あることから、租税公平主義の見地にそぐわないこと。

 

3.実務上、広大地評価に関する適用要件が明確ではない部分が多かったため、納税者と課税庁との間において見解の相違により広大地評価が否認される可能性があり、専門家からの立場を持ってしても適用可否の判断が難しかったこと。

 

今回の改正により納税者が不利となるケースは、先にも述べたように、今回の改正により広大地における補正率が下がることにより、減額効果が現在の広大地評価による効果よりも小さくなることが考えられます。また、改正後の基準により広大地から外れてしまうというケースも考えられるのではないでしょうか。

 

駆け込みというのは、あまりお勧めはしませんが、現行の広大地評価が改正後よりも有利であることが明らかな場合には、平成29年12月31日までに「贈与」することを検討した方が良いというケースもあるでしょうね。

※当然ですがその場合には、多角的かつトータル的に考える必要はあるでしょうが。

 

相続財産に国債があ った場合の評価

 

国債には個人の方が購入しやすいように、購入者を個人に限定した「個人向け国債」があり、現在金利別に、変動金利10年、固定金利5年、固定金利3年の3種類の国債が発行されています。

発効後1年を経過すればいつでも国の買い取りにより中途換金ができます。

 

相続財産に個人向け国債がある場合の評価方法は、課税時期において中途換金した場合に支払いを受けることが出来る価額によります。

具体的には下記のような算式により計算した金額によって評価することになります。

 

額面金額 + 経過利息相当額 - 中途換金調整額 = 中途換金受取額

 

経過利息相当額は直近の利払日から課税時期までの利息相当額中途換金調整額は直前2回分の各利息(税引前)相当額×0.79685

 

したがって個人向け国債の相続税評価額は必ず額面金額(元本金額)よりも少なく評価することになります。

 

相続税の債務控除

 

債務控除は、被相続人が死亡した時にあった債務で確実なものを、その債務を負担することとなる一定の相続人や包括受遺者(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含む)の遺産総額から差し引くことができる制度です。

 

医療費を負担したのが、1.被相続人、2.相続人、である場合、次の取扱いとなります。

 

1.被相続人が負担

(相続開始前に支払)

相続開始前に被相続人が支払った医療費は、相続開始時点では債務が消滅しているため、債務控除の対象とはなりません。

 

(相続開始後に支払)

相続開始後に請求される医療費を自分で支払うことはないため、債務控除の対象とはなりません。

 

2.相続人が負担

(相続開始前に支払)

相続人が、相続開始前に被相続人の医療費を支払った場合、債務控除の適用が受けられるか否かは、扶養義務の有無によって異なります。
相続人に扶養義務がある場合に、相続人が被相続人の医療費を支払うことは、扶養義務の履行の一部とされるため、債務控除の対象にはなりません。
逆に、相続人に扶養義務がない場合に被相続人の医療費を支払うことは、立替払いと考えられるため、債務控除の対象となります。

 

(相続開始後に支払)

相続開始後に相続人が被相続人の医療費を支払った場合は、債務控除の対象となります。
その相続人が被相続人と生計を一にしていた場合は、相続税の債務控除だけでなく、相続人自身の確定申告で、医療費控除の適用を受けることもできます。

 

所得税の医療費控除

 

医療費控除は、自己又は生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費の一定額を控除できる制度です。

 

生計を一にするとは、必ずしも同居が要件とはされておらず、常に生活費や療養費等の送金が行われている場合など、同じ財布で生活しているのであれば、生計を一にしているものとして扱われます。

また、現実に支払った医療費が該当するため、未払いとなっているものは控除の対象とはなりません。

 

医療費を負担したのが、1.被相続人、2.長男(生計一)、3.長女(生計別)である場合、次の取扱いとなります。

1.被相続人が負担
(相続開始前に支払)

準確定申告で医療費控除が可能です。

 

(相続開始後に支払)

相続開始後の医療費は、たとえ被相続人の財産から支払ったものであっても、相続開始時点では未払いであり、被相続人が支払ったことにはならないため、医療費控除の対象とはなりません。

 

2.長男(生計一)が負担

被相続人が治療を受けた時点で生計を一にしているのであれば、相続開始前、相続開始後の支払いに関わらず、被相続人に係る医療費を長男の医療費控除の対象とすることができます。

 

3.長女(生計別)が負担

被相続人と生計を一にしていないため、相続開始前、相続開始後に関わらず、医療費控除の適用は受けられません。

 

タワーマンション以外の不動産節税

 

日本にいる居住者が、海外の不動産で家賃収入があると、日本の税法での所得税の申告が必要になります。

 

不動産所得の主な必要経費の一つに建物の減価償却費があります。

海外不動産投資の節税には、この減価償却費が大きな要素になります。

アメリカやイギリスの住宅市場は中古物件が主流で、中古物件の価格が下がりにくく安定しています。

すでに日本の税務上の耐用年数を過ぎた物件を相当の金額で購入すれば、初年度から多額の減価償却費を計上できます。すると海外不動産所得が赤字になります、その赤字と日本での他の所得と相殺して税金を安くします。

 

<事例> 築22年の木造コンドミニアムを2千万円(建物価格)で購入した場合

すでに日本の税制での耐用年数に達していますので、この場合の中古建物の耐用年数は4年になります。

初年度に計上できる減価償却費 500万円

家賃収入が年間100万円としたら、減価償却費だけで400万円の赤字になります。その他の経費もあるので、赤字はもっと多くなります。そしてこの損失を他の所得と相殺して所得税を安くします。

 

税務上は多額に償却して税務上の建物価格は下がりますが、海外の中古住宅は価格が安定していますので、実際の販売価格はあまり下がりません。実際の資産価値は下がらないのに税務上の価値だけを下げていく手法です。

 

税務上の価値と実際の価値の差額を使う方法は、タワーマンションの節税と共通する点ですね。税法上の価値と実際の価値が大きく乖離した時に、税金のマジックが生まれることが多いようです。

 

この海外中古不動産の件も会計検査院が問題にしていましたので、タワーマンションと同様に改正案に盛り込まれるかもしれませんね。

 

この12月に発表される来年度の税制改正大綱で、明らかになってくると思います。

タワーマンションの相続税節税とは

 

もう、ご存じの方も多いと思いますが、ちょっとおさらいしておきましょう。

タワーマンションの節税は、相続税評価額と実際の価格の差が大きくなることを利用します。

 

 

===マンションの相続税評価額===

<土地・・・路線価×専有持分>

マンション1棟の敷地面積を各持分で按分しますので、部屋の面積が同じなら高層階も、低層階も同じ評価額になります。また1区画の敷地の上に多くの戸数ができますので、1区画1個の建物の建つ戸建よりも評価面積も小さくなります。

 

<建物・・・固定資産税評価額>
建物はさらにわかりやすく、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。相続税においても1㎡あたりの評価額は高層階も低層階も同じになります。

 

 

○ タワーマンション節税のポイント

(1) タワーマンションの高層階は預貯金より相続税での評価が下がるのに、換金性が高い
人気物件であることが多く、賃貸でも売買でも流動性が高い

 

(2) 土地の評価対象面積が少ないので相続税評価額も小さくなる敷地面積に対して総戸数が多いため

 

(3) 高層階でも、低層階と同じ評価額になる。
一棟全体で価格が決まり、各部屋は、単純に持分面積で按分されるため

 

このように、タワーマンションの高層階の部屋は、実際の価値と相続税評価額の差異が大きくなります。この差異を利用した節税方法が問題になっていました。

 

 

<事例> 40階建てマンションの販売価格が下記のタワーマンションがあるとします

・最上階A室 1億2千万円 ・21階B室9000万 ・1階C室5000万 間取りは全て同じです。

1室あたりの相続税評価額は、約4千万円ほどになるかと思います。現行法では3室とも同額の4000万円になります。

Aさんの場合
財産・・預金2億円   相続人・・奥さんなし、子供3人

① Aさんが財産を預金でそのまま持っていた場合
相続税評価額  預金 2億円

相続税額   2,460万円になります。

② Aさんが、最上階A室を1億2千万円で購入した場合
相続税評価額  預金 8千万円  マンション 4千万

相続税は、    930万円になります。

税金の差額は 1,500万円にもなりました。

 

もし貸家にしたり、小規模宅地の適用を受けることができれば、さらに評価額は下がります。

しかも、相続税での評価額が下がっただけで、実際の価格は、あまり下がりませんので、相続した後にマンションを売却すれば、②の場合も2億円近く相続したことになります。それなのに相続税には大きな差がでます。

 

この節税方法が、租税回避行為として否認された事例がありますが、それは、あまりにも短期間で購入、相続、売却をした特殊なケースでしたので、一応、まだ、このスキームは利用されています。

 

今回の改正で、高層階の評価額が、実際の価格に近づくように改正されるため、上記の節税方法に一定の規制がかかるでしょう。

改正の適用年によっては、かけこみ需要があるかもしれません。

タワーマンション問題と固定資産税

 

マンションの高層階と低層階では、新築販売時の価格は高層階の部屋の方が高額だし中古でも高層階の方が高く売れますよね。

でも、固定資産税は高層階も低層階も同額です。単純に広さ(持分面積)で計算されるだけです。

つまり税金の計算では、高層階も低層階も同じ価値として評価されていました。

どうしてこんなことがおこるのでしょうか?

 

 

固定資産税は、その年の1月1日の所有者に課税される地方税です。

基本的には固定資産税評価額に標準税率1.4%をかけた金額です。それに各種軽減税率適用等があります。

土地の固定資産税評価額は、毎年、国が発表している公示地価の7割を目安に決められています。

建物の固定資産税評価額は、建築価格から時価を算定して決められています。

現行、マンションなどの集合住宅の固定資産税は、まずはマンション一棟全体で、その敷地と建物の固定資産税を算出します。

そして、各所有者は、マンション一棟全体の課税金額を、自部屋の専有持分で按分された金額を課税されます。

つまり、40階の部屋も1階の部屋も1㎡あたりの税額は同じです。

南向き、北向きとかは一切考慮されません。ただ面積だけの按分です。

税金は、その価値で決定されるべきなのに、これでは、不公平ですよね。

 

 

そこで今回、この不公平を是正するために、国は改正に向けて検討していることが発表されました。

20階建て以上のマンションを対象に、固定資産税を中層階はいままでどおり、高層階を高くして、低層階を安くする方向で検討されているようです。

マンション全体の税額は変更しないようです。

遺言について良くある疑問

 

Q1、遺言を書いた後、書き直すことはできますか?

A  可能です。複数の遺言がある場合は、要件を満たしている最新の日付の遺言が有効となります。
公正証書遺言などは作成するたびに手数料がかかります。

 

 

Q2、預金を相続させる旨を記載した場合は、いつの時点の預金残高を記載するのですか?

A  通常、預金を相続させる場合は

○○銀行△△支店 普通預金 口座番号××××は長男へ遺贈する。

と記載するため残高を記載しない場合が一般的です。
なぜなら預金残高は増減するためです。
遺言を書いた時期の残高に関係なく相続開始時期の残高が長男に相続されます。

 

 

Q3、遺言を作成した後、その遺言に記載された預金を引き出しても問題ありませんか?

A  問題ありません。
全額預金を引出して口座を解約しても問題ありません。
遺言に記載された財産がない場合は、その部分のみが無効になるだけでその他の財産については無効になりません。

 

 

Q4、定期預金3000万円の内、2000万円を長男へ1000万円を妻へという遺言は可能ですか?

A  可能ですが、将来、定期預金の一部を解約して残高不足の場合は当初の思い通りに財産を渡せません。
そのため定期預金の2/3は長男へ、1/3は妻へという割合で指定する方法もあります。

 

 

Q5、上場株式や自社株式などについても上記と同じ考え方ですか?

A  はい。株式なども売買されるため保有株数が増減します。
また株価の時価は変動するものです。
相続開始時に保有する株数を相続することになります。
非上場株式の場合は以下のように記載します。

例)
株式会社△△△ 普通株式 全てを長男へ遺贈する。

 

 

Q6、全ての財産について分配を決める必要がありますか?

A  いいえ。自宅の土地だけ又は定期預金のみを特定の人物に相続させる旨を記載した遺言も有効です。
現時点で決まっている財産について記載し、後日別の財産について記載した遺言を作成することも可能です。

財産価値は時間の経過とともに変動していきます。
遺留分に配慮した遺言を書いたつもりでも財産価値が目減りして遺留分に満たなくなり『家族で争う』争族に発展することもあります。

 

 

遺言を『罪深き呪いの書』にしないためにも専門家と相談しながら遺言を作成することをお勧めします。

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