税務お役立ち情報

個人事業から法人となった時の退職金

法人成り後に支給した退職金は個人と法人どちらの経費にできるのでしょうか。

 

原則的には個人事業期間と法人期間で分けなければいけません。

 

個人事業を引き継いで設立された法人が、個人事業当時から引き続き在職する従業員の退職に伴い退職金を支給する場合は、一般的にその退職金には個人時代と法人成り後の両方の勤務に対応する期間分が含まれていると考えられるため、原則として個人時代の勤務に対応する部分の金額は法人の損金の額には算入されず、個人所得税の最終年分の必要経費となります。

 

しかし、その退職が法人設立後、相当の期間が経過した後である場合その支給した退職金の金額が法人の損金の額に算入できるとされています。

 

「相当の期間」とはどのくらいの長さかというのは、取引慣行によって定めるべきとされています。
平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について、更正の請求ができる期間は5年とされています。
6年程度と考えるのが妥当でしょうか?

 

困ったケースとして、法人成り後すぐに退職してしまうことも考えられます。
その場合、法人成りした年度の所得税の確定申告を行う際に、退職金の要支給額を計算して、法人へ支払ってしまう方法があります。
個人事業主は退職給与規定等を有し、退職給与の要支給額の計算が適正に行われていれば、新設法人に支払う退職金相当額は個人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。
受け入れた法人は預り金のような形で計上し、法人では損金計上できなくなります。

 

もう一つは、後発事象として更正の請求を行い、個人所得税の最終年分の必要経費とすることができます。

 

では、法人成り後の退職者に対して支払う退職金の退職所得控除の計算基礎ともなる勤続年数は、個人事業時代の勤続年数を通算できるのでしょうか。

 

 

ポイントは退職給与規定です。

 

退職給与規定等に個人事業当時からの期間を含めた勤続期間を基礎として退職金を計算する旨が定められており、それに従って計算した退職金を支払うのであれば、原則として個人事業当時の勤続期間を含めて勤続年数を計算することができます。

 

ただし事業主であった者、専従者であった者については、あくまでも法人設立の日から退職するまでの期間が勤続年数となるため、個人事業当時の勤続期間を通算することはできません。

 

今回は従業員に対して支給する退職金についてご紹介いたしました。
法人成り後、まだ従業員のいない法人であっても、役員に対しては退職金を支給できます。
まずは退職給与規定等の作成から、準備してみるのはいかがでしょうか。


・2016年3月8日 公開


関西・大阪の会社設立に関することなら、いつでもお気軽にご相談下さい。 0120-633-017
お問い合わせメールフォーム