税務お役立ち情報

医療法人の非常勤理事の役員報酬

 

■医療法人の非常勤理事に対する役員報酬の年払い支給■

 

まず、法人における役員報酬の損金計上の規定は法人税法第三十四条にその定めがありますので、その一部を抜粋致します。

 

・・・法人税法 第三十四条 (役員給与の損金不算入)・・・

内国法人がその役員に対して支給する給与のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しない。

 

 

一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(「定期同額給与」という。)

 

二 その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益連動給与(利益の状況を示す指標を基礎として算定される額を支給する給与をいう。)を除くものとし、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給するものに限る。)以外の給与にあつては政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合における当該給与に限る。)
※ 届出とは「事前確定届出給与に関する届出」となります。

 

上記の内容だと分かりづらいため、要約しますと、

法人税法第三十四条に該当すれば、役員報酬の損金計上が可能ということです。

 

第一項は「定期同額給与」のことが記載されており、第二項は「所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(事前確定届出給与)」のことが記載されております。

 

同族会社の役員報酬の年払いは上記の第二項に記載されている事前確定届出給与について届出を行った場合、認められます。

また、非常勤役員に対する年払い給与については法人税法基本通達9-2-12の(注)書きにて定めがありますので、その一部を抜粋致します。

 

・・・法人税法 基本通達 9-2-12(定期同額給与の意義)・・・

(注) 非常勤役員に対し所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する年俸又は期間俸等の給与のうち、次に掲げるものは、法人税法第三十四条第2号《事前確定届出給与》に規定する給与に該当する。

(1) 同族会社に該当しない法人が支給する給与

(2) 同族会社が支給する給与で令第69条第3項《事前確定届出給与の届出》に定めるところに従って納税地の所轄税務署長に届出をしているもの

 

以上により、非常勤役員に対する年払い給与を損金計上するためには、同族会社か否かにより、事前確定届出給与の届出が必要になるか否かの違いがあるということとになります。

 

つまり・・・

 

非同族会社の非常勤役員に対する所定の年払い報酬は事前届出なしでも損金計上が認められるということです。

 

結果・・・

医療法人は「同族会社に該当しない法人」です。

法人税法にて定めのある同族会社とは会社法に定める会社で以下となります。

・株式会社(特例有限会社を含む))
・合名会社
・合資会社
・合同会社

よって、医療法人はこれらに定める会社ではないので、「同族会社に該当しない」ということとなります。

持分なし医療法人への移行申請について

平成26年度税制改正により、「医業継続に係る相続税・贈与税の 納税猶予等の制度」が創設されました。

医療法人には、株式会社の様に持分がある医療法人と、持分が無い 医療法人があります。平成26年の統計では、医療法人は49,88 9社あり、8割が持分あり医療法人です。

厚生労働省は、あくまで医療法人側の任意で、持分あり医療法人から 持分なし医療法人へ移行することを望んでいます。

その理由は、例えば社員から持分払い戻しの請求がある場合、その金 額が多額の為、医療法人の経営が傾き、病院が破綻することで、地域医 療の提供に支障がでると困るからです。

*医療法人は配当ができませんので、利益が蓄積されていることが多いです。

では今回の改正はどの様なものかと言うと、一定の期間(平成26年 10月1日から平成29年9月30日)に、移行計画の認定申請を行い、 申請から3年以内に、持分を放棄することで、持分に係る経済的利益に 課税しないという税制面での措置と、税制面とは別に持分の払い戻しに 係る資金の融資制度の両方から支援する制度です。

例えば、将来社員が退社する場合、社員が持分を自ら放棄してくれる 場合と払い戻す場合が考えられます。

(1)放棄してくれる場合、払い戻しする金銭の心配は無いのですが、課 税の問題が起こります。
放棄する事により他の社員へ経済的利益が移転することによる贈与税 の問題です。今回の制度はこの贈与税を課税しないという措置です。

(2)払い戻す場合は適正額なら課税の問題は起こりませんが、資金の問 題がおこります。その場合独立行政法人福祉医療機構による経営安定化 資金の貸付を受ける事ができます。

なんと良い制度だ!是非ともこの制度を使い持分を放棄し、将来的に 経営を安定させたいと考えますが・・・・

ちょっとお待ちください。実はこれには一つ落とし穴があるのです。

(1)の例で言うと、確かに個人間の贈与税の問題は、今回の税制措置 で課税されませんが、ちょっと難しいのですが、一定の基準をクリアー した医療法人でない限り、今度は医療法人に対して贈与税を課税すると 言う事がおこります。
この一定の基準のハードルが非常に高いので、現状ではなかなか持分 のない医療法人への移行申請は当社では難しいと考えています。

もちろん一定の基準をクリアーできる医療法人は、移行に関して何ら 問題は無いと思います。

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