税務お役立ち情報

扶養控除に必要な書類と提出

 

前回の国外居住親族に係る扶養控除の概要の続きです。

 

=「送金関係書類」とは=

 

「送金関係書類」とは、次の書類で、居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための資金を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。

 

A 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払いしたことを明らかにする書類

B いわゆるクレジットカード発行会社の書類又は写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入しこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領した、又は受領することとなることを明らかにする書類

 

(注)

1.送金関係書類については、原本に限らずその写しも送金関係書類として取り扱うことができます。

 

2.送金関係書類には、具体的には次のような書類が該当します。

1) 外国送金依頼書の控え

※ その年において送金した外国送金依頼書の控え(全て)が必要になります。

※ 同一の国外居住親族への送金が3回以上となる場合には、一定の事項を記載した明細書の提出と各国外居住親族のその年最初と最後に送金等した際の「送金関係書類」の提出又は提示をすることにより、それ以外の「送金関係書類」の提出又は提示を省略することができます。

 

2) クレジットカードのご利用明細書

※ クレジットカードの利用日の年分が送金関係書類となります。

 

3.国外居住親族が複数いる場合には、送金関係書類は扶養控除等を適用する国外居住親族の各人ごとに必要となります。

※ 代表者の方へまとめて送金する場合は代表者のみの「送金関係書類」に該当し、その代表者の方以外の国外居住親族に係る「送金関係書類」には該当しないことになります。

 

 

=「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出(提示)の時期=

 

1. 国外居住親族に係る「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する者は、その申告書を給与等の支払者に提出する際に「親族関係書類」を併せて提出し又は提示し、年末調整を行う際に給与等の支払者に「送金関係書類」を提出又は提示する必要があります。

 

2. 国外居住親族に係る「従たる給与についての扶養控除等申告書」又は「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を提出する者は、これらの申告書を給与等又は公的年金等の支払者に提出する際に「親族関係書類」を併せて提出又は提示する必要があります。

(注)

「送金関係書類」を上記の支払者に提出(提示)する必要はありませんが、確定申告を行う際には、確定申告書に添付するか、又は確定申告書を提出する際に提示する必要があります。

 

3. 年末調整の際に、非居住者である配偶者に係る「給与所得者の配偶者特別控除申告書」を提出する者は、この申告書を給与等の支払者に提出する際に「親族関係書類」と「送金関係書類」を併せて提出又は提示する必要があります。

 

 

今回の改正は 一部の国外居住親族が異常な数になっているケースが散見されたことから、取り扱いが厳格になったものと考えられます。

今年も引き続き、国外居住親族を扶養控除等する場合又は新たに国外居住親族を扶養控除等する場合には「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要になります。「親族関係書類」は入手できると思いますが、「送金関係書類」は年内の証明が必要になります。

 

国外居住親族に係る扶養控除の概要と親族関係書類

 

=概要=

 

平成27年度の税制改正により、所得税法等の一部が改正され、給与等又は公的年金等の源泉徴収及び給与等の年末調整において、非居住者である親族(以下「国外居住親族等」といいます。)に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除(以下「扶養控除等」といいます。)の適用を受ける居住者は、その国外居住親族に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」(これらの書類が外国語で作成されている場合には、その翻訳文を含みます。)を源泉徴収義務者に提出し、又は提示しなければならないことされました。

 

この改正は平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき給与等及び公的年金等について適用されます。

 

(注) 確定申告において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合にも「親族関係書類」及び「送金関係書類」を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示しなければならないこととなります。ただし、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収又は給与等の年末調整の際に源泉徴収義務者に提出し、又は提示したこれらの書類については、確定申告書に添付又は提示は要しないこととされています。

 

 

=「親族関係書類」とは=

 

「親族関係書類」とは、次のA又はBのいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。

A 戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し

B 外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」といいます。)が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載のあるものに限ります。)

 

(注)

1.親族関係書類は、国外居住親族の旅券の写しを除き、原本の提出又は提示が必要です。

 

2.Bの外国政府等が発行した書類は、例えば、次のような書類が該当します。

・戸籍謄本 ・出生証明書 ・婚姻証明書

※ 外国語で作成されてい場合は翻訳文も提出又は提示することとされています。

 

3.16歳未満の非居住者である扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類の提出又は提示が必要です。

 

相続税の債務控除

 

債務控除は、被相続人が死亡した時にあった債務で確実なものを、その債務を負担することとなる一定の相続人や包括受遺者(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含む)の遺産総額から差し引くことができる制度です。

 

医療費を負担したのが、1.被相続人、2.相続人、である場合、次の取扱いとなります。

 

1.被相続人が負担

(相続開始前に支払)

相続開始前に被相続人が支払った医療費は、相続開始時点では債務が消滅しているため、債務控除の対象とはなりません。

 

(相続開始後に支払)

相続開始後に請求される医療費を自分で支払うことはないため、債務控除の対象とはなりません。

 

2.相続人が負担

(相続開始前に支払)

相続人が、相続開始前に被相続人の医療費を支払った場合、債務控除の適用が受けられるか否かは、扶養義務の有無によって異なります。
相続人に扶養義務がある場合に、相続人が被相続人の医療費を支払うことは、扶養義務の履行の一部とされるため、債務控除の対象にはなりません。
逆に、相続人に扶養義務がない場合に被相続人の医療費を支払うことは、立替払いと考えられるため、債務控除の対象となります。

 

(相続開始後に支払)

相続開始後に相続人が被相続人の医療費を支払った場合は、債務控除の対象となります。
その相続人が被相続人と生計を一にしていた場合は、相続税の債務控除だけでなく、相続人自身の確定申告で、医療費控除の適用を受けることもできます。

 

所得税の医療費控除

 

医療費控除は、自己又は生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費の一定額を控除できる制度です。

 

生計を一にするとは、必ずしも同居が要件とはされておらず、常に生活費や療養費等の送金が行われている場合など、同じ財布で生活しているのであれば、生計を一にしているものとして扱われます。

また、現実に支払った医療費が該当するため、未払いとなっているものは控除の対象とはなりません。

 

医療費を負担したのが、1.被相続人、2.長男(生計一)、3.長女(生計別)である場合、次の取扱いとなります。

1.被相続人が負担
(相続開始前に支払)

準確定申告で医療費控除が可能です。

 

(相続開始後に支払)

相続開始後の医療費は、たとえ被相続人の財産から支払ったものであっても、相続開始時点では未払いであり、被相続人が支払ったことにはならないため、医療費控除の対象とはなりません。

 

2.長男(生計一)が負担

被相続人が治療を受けた時点で生計を一にしているのであれば、相続開始前、相続開始後の支払いに関わらず、被相続人に係る医療費を長男の医療費控除の対象とすることができます。

 

3.長女(生計別)が負担

被相続人と生計を一にしていないため、相続開始前、相続開始後に関わらず、医療費控除の適用は受けられません。

 

欠損金の繰越控除と繰戻還付について

 

■欠損金の活用方法について(その1)

欠損金とは、「税務上の赤字」のことで、決算書の「当期損失額」とは異なります。

欠損金の税務上の活用方法には2種類あります。

1つは「欠損金の繰越控除」で、ご存知の方も多いのではないでしょうか。現在の規定では欠損金を9年間(注1)にわたって繰り越すことが可能で、
その間に所得(税務上の黒字)が発生したら、欠損金と相殺できる、というものです。

中小企業者等であれば、発生した所得金額が相殺の対象になりますが、中小企業者等以外の法人は発生した65%が相殺の対象となりますので、ご留意ください。

 

欠損金が生じた事業年度(以下、この事業年度を「欠損事業年度」といいます。)において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出する必要があります。

欠損事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度について提出した確定申告書が白色申告書であっても、この繰越控除の規定が適用されます。

 

 

また、繰越欠損金は、最も古い事業年度において生じたものから順次所得と相殺します。

(注1)各事業年度において生じた欠損金の繰越期間
(欠損事業年度)                  (繰越期間)
・平成13年4月1日前に開始した各事業年度 ・・・  5年
・平成13年4月1日から平成20年3月31日・・・  7年
・平成20年4月1日から平成29年3月31日・・・  9年
・平成29年4月1日以後に開始する各事業年度・・・ 10年
※税制改正で延長されます。

 

 

■欠損金の活用方法について(その2)

そして、もう1つが「欠損金の繰戻還付」制度です。「前期に所得が出ていて税金を払っている場合において、当期が欠損だったときは、当期の欠損分を限度として、前期に払った税金が還付される。」という制度です。

原則的には停止中の規定ですが、中小企業者等に限り適用可能です。

還付金額は、次の計算式により求めることができます。

 

還付金額=還付所得事業年度(注2)の法人税額×欠損事業年度の欠損金額(注3)÷還付所得事業年度の所得金額

 

例えば、前期(還付所得事業年度)の所得が200万円で、法人税額を30万円払った場合において、当期(欠損事業年度)の欠損金が100万円だったときは、次のように還付金額を求めます。

 

30万円×100万円÷200万円=15万円

 

(注2)
還付所得事業年度とは、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度をいいます。

 

(注3)
法人が還付金額の計算の基礎として還付請求書に記載した金額が限度となります。また、欠損事業年度の欠損金額が還付所得事業年度の所得金額より多くても、還付所得事業年度の所得金額が限度になります。

 

 

■繰越欠損金を上手に使って節税

欠損金の税務上の活用方法2種類について説明させていただきました。では、「欠損金の繰越控除」と「欠損金の繰戻還付」のどちらを選択したら良いでしょう?

 

資金繰り重視なら断然「繰戻還付」でしょう。すぐに税金が戻ってくるわけですから、利用しない手はないかと思います。「繰越控除」の場合は、メリットを受けるのは1年以上先になってしまいます。

ただ、繰戻還付は繰越控除に比べて要件が厳しく、下記の適用要件を満たすことが必要です。

 

1.中小企業者等(資本金又は出資金の額が1億円以下の普通法人等)であること(個人事業者は含みません)。

2.前期(税金を払った年度)も当期(欠損事業年度)も連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。

3.当期(欠損事業年度)の確定申告書を青色申告により期限内に申告していること。

4.確定申告書と同時に欠損金の繰戻還付請求書を提出していること。

 

以前は、「還付請求したら調査が来る」という定説(?)まであったほどで、それが理由で還付請求をためらうケースもありましたが、昨今の不況下でそうも言っていられない会社もたくさん出てきたことでしょう。

 

不況下での経済活性化対策のひとつでもあるとのことです。正しい決算で、正しい申告をしていれば、調査も恐れることはありませんので、躊躇せずにどんどん活用しましょう。

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