インボイス制度の導入
かねてから導入が取沙汰されていた「インボイス制度」が導入されます。
平成33年4月とまだ先の話なのですが、個人事業者や法人経営者は気になられている方も多いと思いますので、改正案の概要をお話しいたします。
正式には「適格請求書等保存方式」という名称で、今までは帳簿方式という、帳簿の保存に加え、取引相手が発行した請求書領収書等の証拠書類の保存を仕入税額控除の要件としていました。
インボイス制度が導入されますと原則としてこの適格請求書を保存することで、仕入税額控除の要件となるようです。
誰でも発行できるものではなく、課税事業者のうち納税地の税務署長に申請書を提出して初めて適格請求書を交付する事業者として登録されます。
また名称・登録番号等はインターネットに公開されます。
平成33年4月以降すぐにその適格請求書発行事業者からでなければ仕入税額控除ができなくなるわけではなく、平成33年4月1日から平成36年3月31日までの間は経過措置が設けられており、その登録した適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者やまだ登録していない課税事業者)から行った課税仕入は消費税相当額に80%(平成36年4月1日から平成39年3月31日までの間は50%)を乗じた額が税額控除できます。
要はその適格請求書が発行されていなければ経過措置後は仕入税額控除が一切できなくなるということで、益税問題を解消する一つにはなるでしょうが、実務としては、課税事業者の皆さんはもちろん、我々会計事務所と
しては大きな転機を迎えることになります。
同じ商品・サービスでかつ同程度の金額であれば、課税事業者は当然、100%仕入税額控除したいので、適格請求書発行事業者からの購入が集中し、簡易課税適用事業者や免税事業者は取引相手を特に気にせず購入することになるのでしょうね。
同じ商品・サービスを行う事業者間で適格請求書発行事業者の有無による行き過ぎた商売や過度な値引き等が起こらないことを願いたいものです。
基準期間課税売上高が1000万円以下であっても、売上急減を回避するためにあえて課税事業者のままの事業者(適格請求書発行事業者)も出てくるかもしれませんね。
インボイスになるので、免税事業者であれば当然、税抜金額になりますが、その消費税は払わない(仕入税額控除できない)ことになり、課税事業者であれば消費税を払う(仕入税額控除できる)ことになるので、いつ負担するかであって、結局損得は変わりません。影響があるのは課税事業者のうち簡易課税制度適用事業者でしょうか。
あと、この適格請求書発行事業者が基準期間課税売上高が1000万円以下となり免税事業者になる場合は、その登録取消の届出書を提出しない限り免税事業者になれないので注意が必要です。
消費税創設時は免税点制度は3000万円、簡易課税制度は5億円、みなし仕入率は2区分、実務家の方には懐かしい響きの限界控除(現在は廃止)なるものまであり、中小企業の事務負担を軽減する目的とした措置が結構ありました。
10%増税や8%据え置きの軽減税率も議論されていますが、大事なのは今までの益税を縮小してきた努力を無駄にしないような真の政策ではないでしょうか。
・2016年5月24日 公開