税務お役立ち情報

持分なし医療法人への移行申請について

平成26年度税制改正により、「医業継続に係る相続税・贈与税の 納税猶予等の制度」が創設されました。

医療法人には、株式会社の様に持分がある医療法人と、持分が無い 医療法人があります。平成26年の統計では、医療法人は49,88 9社あり、8割が持分あり医療法人です。

厚生労働省は、あくまで医療法人側の任意で、持分あり医療法人から 持分なし医療法人へ移行することを望んでいます。

その理由は、例えば社員から持分払い戻しの請求がある場合、その金 額が多額の為、医療法人の経営が傾き、病院が破綻することで、地域医 療の提供に支障がでると困るからです。

*医療法人は配当ができませんので、利益が蓄積されていることが多いです。

では今回の改正はどの様なものかと言うと、一定の期間(平成26年 10月1日から平成29年9月30日)に、移行計画の認定申請を行い、 申請から3年以内に、持分を放棄することで、持分に係る経済的利益に 課税しないという税制面での措置と、税制面とは別に持分の払い戻しに 係る資金の融資制度の両方から支援する制度です。

例えば、将来社員が退社する場合、社員が持分を自ら放棄してくれる 場合と払い戻す場合が考えられます。

(1)放棄してくれる場合、払い戻しする金銭の心配は無いのですが、課 税の問題が起こります。
放棄する事により他の社員へ経済的利益が移転することによる贈与税 の問題です。今回の制度はこの贈与税を課税しないという措置です。

(2)払い戻す場合は適正額なら課税の問題は起こりませんが、資金の問 題がおこります。その場合独立行政法人福祉医療機構による経営安定化 資金の貸付を受ける事ができます。

なんと良い制度だ!是非ともこの制度を使い持分を放棄し、将来的に 経営を安定させたいと考えますが・・・・

ちょっとお待ちください。実はこれには一つ落とし穴があるのです。

(1)の例で言うと、確かに個人間の贈与税の問題は、今回の税制措置 で課税されませんが、ちょっと難しいのですが、一定の基準をクリアー した医療法人でない限り、今度は医療法人に対して贈与税を課税すると 言う事がおこります。
この一定の基準のハードルが非常に高いので、現状ではなかなか持分 のない医療法人への移行申請は当社では難しいと考えています。

もちろん一定の基準をクリアーできる医療法人は、移行に関して何ら 問題は無いと思います。


・2015年6月22日 公開


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