早朝出勤は残業になるの?
単純に、始業時間前に出社しても、残業扱いにはならないようです。
残業に当たるのは、業務を行うことを『会社が命令』した場合が原則のようです。
早朝出勤が残業になるかは、会社ごとの社内規程を確認いただき、法的な内容については弁護士、社会保険労務士等の専門家に確認いただいたほうが確実だと思います。
残業として取り扱うことになると、時間外の割増賃金が発生することは、想像がしやすいと思います。
その場合は、単純に給与収入が増加し所得税・住民税が課税されます。
会社によっては、給与の他に食事を支給することがあると思います。食事代の会社負担については、取扱が所得税の通達で公表されています。
次の項目で、課税関係がどのようになるか簡単に説明していきます。
早朝出勤を残業と取り扱う場合
早朝出勤を残業として取り扱う場合は、朝食についても既存の残業食事代の規定が適用されます。
① 会社側が朝食を購入した場合
会社側が朝食を購入し、従業員に支給する方法です。
全ての従業員に朝食を無料で受ける権利が与えられている時は、全員でなく一部の人しか利用しなかったとしても個人に対する課税関係は生じません。
② 従業員が朝食を購入した場合
従業員が購入した朝食代を会社で精算する方法です。
こちらの方法では、領収書やレシートで朝食の購入と明らかにされるものは、①と同様に個人に対する課税関係は生じません。
証憑なしに金銭だけ支給すると、通常の給与と同じ取扱いになるので注意が必要です。
①、②に共通して、社会通念上高額な食事を購入した時や、特定の役員や役員の親族のみを対象にしたものは所得税・住民税が非課税ではなくなりますので、ご留意ください。
朝食代を負担した会社側は『福利厚生費』等として経費に計上できます。
一人で行った食事代でも内容によっては、個人の所得税が課税されずに会社側で経費計上できます。
飲食代は誰がどのような理由で行ったものか明確に経費精算することをおすすめします。
※参考規定 所得税基本通達36-24
早朝出勤を勤務時間の一部と取り扱う場合
早朝出勤が残業ではなく、勤務時間の前倒しとして取り扱う場合は、残業食事代の規定とは異なり、全額非課税とはなりませんが、一定の金額までは非課税とされる規定が適用されます。
こちらは、主に昼食の補助等に用いられている規定です。
① 会社側が朝食を購入した場合
下記の2つの要件に該当すれば、個人に対する課税関係は生じません。
(イ) 従業員が食事の金額の50%以上を負担
(ロ) 会社側の負担が月額3,500円(税抜き)以下
通常の飲食店ではなく、社員食堂で食事をしていると仮定します。
社員食堂では、通常の価格より安価で食事を提供することがあります。
この規定は、その会社負担の上限を規定しているものです。
食事の金額は、他社から購入した時は購入した金額。会社で調理する時は材料費、調味料費など食事を作るために直接かかった費用の合計です。
昼食も支給する時は、朝食、昼食の合計額で判定することになります。
② 従業員が朝食を購入した場合
従業員が購入した場合も①と基本的に同様です。
単純に食事代の補助として金銭を支給する時は、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合を除き補助をする全額が給与として課税されます。
また、要件の金額を超えて会社が負担した時は、その限度額を超えた金額ではなく会社が負担した全額に所得税・住民税が課税されます。
※参考規定 所得税基本通達36-38の2
早朝出社しても、取り扱いは夜の残業と同様になるようです。
従業員への福利厚生も規定を守っていないと思わぬ課税をされることがあります。
ご参考にしていただければ幸いです。
国際観光旅客税の概要
この税金の徴収によって年間およそ400億円の税収増が見込まれています。現在外国人観光客の関連予算としては、観光庁など各省庁で700億円あまりが使われているのですが、今後外国人観光客をさらに増やすためには、観光先進国実現に向けた観光基盤の充実・強化など様々な政策、そしてそのための予算が必要になります。
その一方で国の財政は大幅な赤字ということで、新たな財源を確保することがこの税金の目的なのです。
国税庁のホームページを覗くと、Q&A・チラシ等がアップされ、周知が進んでいます。
また、納税義務者の定義も明確化され、「観光目的のほか、ビジネス、公務、就業、留学又は医療目的など、その目的を問わず本邦から出国する者が含まれるのであるから留意する」とされており、出国する人を対象とする定義となっています。
国際観光旅客税の税務上の扱い
そして、ビジネス等では、法人の従業員等が海外出張する際には、法人がこの「国際観光旅客税」を負担する場合が想定されます、これもQ&Aで経理方法についても以下の通りです。
―国際観光旅客等の経理編―
(従業員が海外へ出国した際の「国際観光旅客税」を法人が負担した場合の取扱い)
所得税法上の取扱い
従業員の出国が法人の業務の遂行上必要なものである場合には、法人が負担した「国際観光旅客税」に相当する額は、旅費として非課税とされます(所得税法9①四)。
一方、従業員の出国が法人の業務の遂行上必要なものでない場合には、法人が負担した「国際観光旅客税」に相当する額は、その従業員に対する給与として所得税の課税対象となります。
法人税法上の取扱い
従業員の出国に伴い、法人が負担する「国際観光旅客税」に相当する額については、法人の業務の遂行上、必要なものか否かによって、旅
費交通費やその従業員に対する給与として取り扱われますが、いずれの場合であっても法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入されます。
(海外出張に係る「国際観光旅客税」の所得税法上の取扱い)
個人事業主が海外に出国する際に支払う「国際観光旅客税」に相当する額については、その出国が事業の遂行上直接必要であると認められる場合には、その支払った日の属する年の事業所得等の金額の計算上、必要経費の算入されます。
なお、その海外出張について、事業の遂行上直接必要であると認められる期間と認められない期間がある場合には、「国際観光旅客税」に相当する額をそれらの期間の比率等によってあん分し、事業の遂行上直接必要であると認められる期間に係る部分のみ必要経費に算入することになります。
「国際観光旅客税」は、日本人・外国人に関わらず、出国するたびに旅客運賃等に上乗せされて納める税金です。出国1回につき1人1,000円。税収は観光先進国実現の趣旨にのっとって、有効に使って欲しいところです。
会社設立から株式の売買の具体例
<ステップ1>
甲さんが現金100万円でA社を設立しました。
A社・・・ 現金 / 資本金 100万円
<ステップ2>
A社は100万円で100%子会社のB社を設立しました。
A社・・・ B社株式 / 現金 100万円
B社・・・ 現金 / 資本金 100万円
<ステップ3>
B社は甲さんから親会社のA社株式を100万円で購入しました。
B社・・・ A社株式 / 現金 100万円
結果、甲さんの手元に現金100万円が戻ってきました。
またA社とB社は相互に100%親子関係になっています。
A社
100% ↓↑ 100%
B社
上記具体例における会社法の問題
ステップ1~3の取引のうち、会社法により一部規制されています。
スッテプ1とステップ2は問題ありません。
ただステップ3は、子会社であるB社が親会社のA社株式を購入しています。
会社法上、子会社が親会社の株式を取得することは、原則禁止されています。
例外として認められるのは、合併等の組織再編時のみです。(会社法135条1項2項)
そのためステップ3のように子会社B社が親会社株式を取得してしまった場合は相当の時期にA社株式を処分しなければなりません。(会社法135条3項)
想定される場面としては、生前に甲さんが相続税などの納税資金等を確保するためA社株式を売却しようと考えた場合です。
A社にA社株式を売却すると自己株式のため含み益部分について甲さんは、みなし配当課税されます。
みなし配当は、総合課税のため最大45%の所得税率です。
そこで総合課税を回避するため子会社のB社にA社株式を売却すると、どうなるか?
この場合は、含み益部分について譲渡所得となり15%の所得税率です。
そのため、みなし配当よりも税務上有利となることがあります。
だからといってB社にA社株式を売却すると会社法の規制対象になります。
処分する「相当の時期」については、事業年度末まで等の明確な期限がありませんが株価の上昇等を考慮した遅すぎず売り急がない相当な時期までに処分することになると解釈されています。
また処分しない場合はB社の役員等に100万円以下の過料が科されます(会社法976条10号)
その他、議決権にも注意が必要です。
B社がA社株式を保有している期間に開催されるA社の株主総会におけるB社の議決権は、0となります。
これは「株式相互保有の制限」とよばれるものです。(会社法308条1項括弧書)
B社は、A社に25%以上株式を保有されているためA社の支配下にありA社の意思を反映した議決権を行使されると株主間に不公平が生じるためです。
株価評価は、議決権割合により原則的評価方法か特例的評価方法を判定します。
そのため評価方法を判定する議決権についても「株主相互保有の制限」をうけるB社の議決権は0となるため注意が必要です。
評価方法が異なると売買する際に高額譲渡、低額譲渡などに該当する可能性が高まります。
また持分割合を25%未満にして株式相互保有を外すことも検討する場合もあるかと思います。
このようにグループ会社間で株式を移転させる場合は、法律関係が複雑になるため専門家と相談しながら進めることが重要かと思われます。
災害に遭って事業に損失等が生じた時の税務会計
(1)災害により滅失・損壊した資産等
事業を営む個人又は法人の有する商品、店舗、事務所等の資産が災害により被害を受けた場合に、その被災に伴って下記のような損失又は費用が生じたときには、その損失又は費用の額は、必要経費又は損金の額に算入されます。
①商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失又は損壊した場合の損失の額
②損壊した資産の取り壊し又は除去のための費用の額
③土砂その他の障害物の除去のための費用の額
(2)復旧のために支出する費用
事業を営む個人又は法人が、災害により被害を受けた固定資産(以下、「被災資産」という)について支出する下記のような費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、下記の通りです。
①被災資産についてその原状を回復するための費用は、「修繕費」となります。
②被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れ防止等のために支出する費用について、「修繕費」とする経理をしたときは、これが認められます。
③①又は②以外の被災資産について支出する費用の額のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合に、その金額の30%相当額を「修繕費」、残額を「資本的支出」とする経理をしたときは、これが認められます。
※法人が災害により被害を受けた製造設備に対して支出する修繕費用等について、企業会計上、適正な原価計算に基づいて原価外処理(費用処理)しているときは、税務上もこの処理が認められます。
(3)従業員等に支給する災害見舞金品
事業を営む個人又は法人が、災害により被害を受けた従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、「福利厚生費」として必要経費又は損金の額に算入されます。
また、自己の従業員等と同等の事情にある専属下請先の従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品についても、同様に必要経費又は損金の額に算入されます。
(4)災害見舞金に充てるために同業団体等へ拠出する分担金等
事業を営む個人又は法人が、所属する同業団体等の構成員の有する事業用資産について災害により損失が生じた場合に、その損失の補填を目的とする構成員相互の扶助等に係る規約等に基づき合理的な基準に従って、同業団体等から賦課され、拠出する分担金等は、その支出した日の属する年分の必要経費又はその支出する事業年度の損金の額に算入されます。
法人税関係の取り扱い(法人)
(1)取引先に対する災害見舞金等
交際費等にあたらないとして損金の額に算入されます。
被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与等のために要した費用が該当します。
(2)取引先に対する売掛金等の免除等
寄附金又は交際費等以外の費用として損金の額に算入されます。
災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合の、その免除することによる損失が該当します。
(3)取引先に対する低利又は無利息による融資
寄附金にあたらないとして取り扱います。
災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利又は無利息による融資を行った場合における通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額が該当します。
(4)被災者に対する自社製品等の提供
寄附金又は交際費等にあたらない(広告宣伝費に準ずる)として損金の額に算入されます。
不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用が該当します。
(5)災害による損失金の繰越し
法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(災害損失欠損金額)がある場合には、その事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その各事業年度において、損金の額に算入されます。
所得税その他の税法関係の取り扱い(個人)
(1)所得税関係
①個人が支払を受ける災害見舞金
課税されません。
その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものが該当します。
②低利又は無利息により生活資金の貸し付けを受けた場合の経済的利益
課税されません。
災害により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員又は使用人が使用者からその資金に充てるために低利又は無利息で貸し付けを受けた場合に、その返済に要する期間として合理的に認められる期間内に受ける利息相当額の経済的利益が該当します。
③被災事業用資産の損失の繰越し
事業を営む個人のその年の前年以前3年内の各年において生じた純損失の金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係るもの(被災事業用資産の損失の金額)がある場合には、その損失を生じた年分が青色申告書を提出しなかった年分であっても、その被災事業用資産の損失の金額に相当する金額は、その年分の総所得金額等の計算上控除することとされています。
(2)相続・贈与税関係
相続税又は贈与税における「農地等に係る納税猶予の特例」の適用を受けている農地等が、建築資材の置き場に使用されるなど、災害のためにやむを得ず一時的に農業に使用されなくなった場合にも、その土地は農業の用に使用しているものとして、特例の適用が継続されます。
本来ですと、当該特例を受けている農地が、農業に使用されなくなった場合には、納税が猶予されていた一定の税額を納付しなければならなくなります。
(3)印紙税関係
災害義援金の受取書は、印紙税が課税されないものとして取り扱われます。
新聞社、放送局等が、災害援助を目的として一般から広く義援金を募る場合のその受領事実を証明するためのものが該当します。
そして、金融機関が災害義援金の振込依頼を窓口等で受け付けた際に作成する受取書で下記のいずれにも該当するものについても同様に取り扱われます。
①振込手数料が無料であること
②振込先が広く一般に災害義援金を募っている団体等であること
③災害義援金の振込金受取書であることがその文書上明らかにされていること
(4)自動車重量税関係
被災自動車について納付した自動車重量税の還付を受けることができます。
自動車の販売者又は自動車分解整備事業者が、自動車の使用者のために車検証の交付等又は車両番号の指定を受ける目的で保管している自動車のうち、自動車重量税を納付して車検証の交付等又は車両番号の指定を受けた後、被災により走行の用に供されることなく使用が廃止されたものが該当します。
なお、既に走行の用に供していた自動車については、自動車リサイクル法等に基づき適正に解体された場合には、還付される制度があります。
売掛金、貸付金等が回収出来なくなったときの経理処理
いわゆる「貸倒損失」。
貸倒損失とは、売掛金や受取手形、貸付金などの金銭債権の全部又は一部が、債務者の資力喪失などにより回収不能の場合は、その回収不能となった債権額は一定の要件のもと事実が発生した日の属する事業年度において貸倒損失として損金算入されます。
※注)貸倒処理をする前には、「売買契約書」や「請求書・納品書」「債権放棄の通知書」・「債務者の支払い能力が証明できる書面」などの書類を保管しておくことが必要となります。
経理処理等するための税務上の3つの要件は
1.金銭債権が切り捨てられた場合
次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。
(1)会社更生法、金融機関等の更正手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
(2)法令の規定による整理手続きによらない債権者集会の協議決定及び行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額。
(3)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して書面で明らかにした債務免除額の金額。
1の場合は、会社が帳簿に貸倒損失を計上しなくても所得の計算上は損金に算入されます。
(3)の場合は、債権者が行う行為により貸倒損失になる場合を規定しているため処理方法によっては損金算入できない可能性もあるので注意が必要です。仮に債務者が債務超過に陥っているときに損害賠償を求めて裁判をしている場合でも回収不能と言えない時は損金算入が認められない可能性があります。
また、債務超過が相当期間継続している状態とは、債務超過の要因等を総合的に判断して、一般的には3年から5年程度の期間と考えられています。
なお、債権の回収が可能である場合や回収するための努力が認められない状態で債権を放棄した場合は、法人税の計算においては、寄付金として取り扱われる可能性があるので注意が必要です。
2.金銭債権の全額が回収不能となった場合。
債務者の資産状況、支払い能力等からその全額が回収できない事が明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸し倒れとして損金の額に算入することができます。(担保物がある場合は、その担保物を処分した後でなければ損金の額に算入することはできません。)
なお、保証債務は現実に履行した後でなければ貸倒れの対象とすることができません。
2の場合は、会社が帳簿に貸倒損失を計上しなければ損金算入が認められませんので注意が必要です。
2の内容は債権の全額が回収できない事が明らかになった事業年度に貸倒損失を計上して損金算入が認められます。
また、債権の一部が回収不能となりその回収不能となった部分のみを貸倒損失に計上して損金算入する事は認められないので、債権者の都合で貸倒損失を計上する事業年度を調整する事は認められません。
3.一定期間取引停止後弁済がない場合等
次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは含みません。)について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができます。
(1)継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力などが悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき。ただし、その売掛債権について担保物のある場合は除きます。
(2)同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合
3の場合は、2と同様に会社が帳簿に貸倒損失を計上しなければ損金算入が認められませんので注意が必要です。
上記1、2とは異なり主に営業活動から発生した売掛債権に限られ貸付金等は対象外となります。
売上代金が回収できなかった時の消費税は
貸倒となった場合の消費税の処理
売掛金等の債権が貸し倒れになった時は貸し倒れになった金額に対応する消費税額を貸し倒れの生じた課税期間の売上に対する消費税額から控除することができます。
控除の対象となる貸し倒れは、消費税の課税対象となる取引の売掛金等の債権に限られます。
消費税率は平成26年4月1日より税率が5% → 8%に変わりましたが、平成26年3月31日以前に販売した商品が平成26年4月1日以降に貸し倒れになった時は、販売した時点の消費税率が適用されます。
(例)
(イ)平成25年4月10日に商品を販売「5%」 → 平成26年4月に貸倒れ・・・・消費税率は5%で貸倒処理
(ロ)平成25年3月10日に商品を販売「5%」 → 平成26年3月に貸倒れ・・・・消費税率は5%で貸倒処理
(ハ)平成26年4月10日に商品を販売「8%」 → 平成27年4月に貸倒れ・・・・消費税率は8%で貸倒処理
上記(イ)のように平成26年3月31日以前に商品を販売した代金が平成26年4月1日以降(消費税率改正後)に貸し倒れになった場合は5%で貸倒処理をします。
注)貸し倒れになっても消費税が処理できない。
1.貸付金等は対象外
貸付金などの貸付債権が貸倒れとなった場合は消費税が発生しないため控除することはできません。
また、土地売却の未収金、非課税売上の売掛金なども同様です。
2.免税事業者だった場合も対象外
免税事業者が課税事業者になった場合は、免税事業者だったとき発生した売掛金などの売掛債権が、課税事業者になった後、貸し倒れても消費税を控除することはできません。その売掛金などの売掛債権は免税事業者だったときに発生しているため、そもそも消費税を納めてないからです。
詳しいことは、関与税理士等の専門家の方にご相談ください。
免税店制度の概要
免税店制度とは、免税店を経営する事業者が、外国人観光客などの非居住者に対して一定の方法で販売する場合には、消費税が免除される制度です。
なお、消費税が免除されるためには、下記の要件を満たす必要があります。
○免税対象品目
・一般物品 … 家電やバッグ、衣料品など(消耗品以外のもの)
・消耗品 … 食料や飲料、医薬品、化粧品など
○免税対象金額
・一般物品のみ … 5千円以上
・消耗品のみ … 5千円以上50万円以下
・一般物品+消耗品 … 5千円以上50万円以下
※2018(平成30)年7月1日より拡充されています(下記参照)。
○事業用又は販売用として購入されるものでないこと
○一定の方法
・免税店の許可を受けた店舗での販売であること
・「輸出免税物品購入記録票」を作成し、旅券等に割印すること
・「購入者誓約書」に免税物品を購入する非居住者の署名を受け、7年間保存すること
また、免税店制度の歴史は古く、全国免税店協会HPによると、その創設は物品税の時代である1952(昭和27)年まで遡るようですが、近年では主に下記の拡充が行われ、免税店制度は利用しやすくなってきています。
▶2014(平成26)年10月1日~「対象品目拡大」
それまで免税対象外であった消耗品が免税対象に加わりました。
▶2015(平成27)年4月1日~「免税手続一括カウンター、港湾臨時販売場届出制度の創設」
商店街などに手続カウンターを設置することで小規模商店等の負担を軽減。また、外交クルーズ船の寄港時にふ頭へ臨時免税店を出店しやすくなりました。
▶2016(平成28)年5月1日~「免税対象金額の下限額の引き下げ」
・一般物品 … 1万円超 → 5千円以上
・消耗品 … 5千円超 → 5千円以上
▶2018(平成30)年7月1日~「一般物品と消耗品の合算」
それまではそれぞれの区分ごとに5千円以上でなければ免税販売できませんでしたが、新たに特殊包装等一定の要件を満たすことで、合算で5千円以上であれば免税販売できるようになりました。
上記に加え、次の拡充が予定されています。
▶2020年4月1日~「免税販売手続の電子化」
現行の紙による免税販売手続(購入記録票のパスポートへの貼付・割印等)を廃止し、免税販売手続を電子化する必要があります。
※2021年9月30日までは、紙による免税販売手続も可能です。
免税店における免税販売手続の電子化
2020年4月1日(施行日)からは、従来より免税店において紙により行われている購入記録票の作成などの免税販売手続が廃止され、免税店を経営する事業者が、非居住者のパスポート等の情報と免税販売した物品についてのデータ(購入記録情報)を、インターネット等を介して、国税庁に提供することとなります。
この改正は、免税店を経営する全ての事業者が対応しなければなりません。2021年9月30日までは現行の紙による免税販売手続も可能ですが、同日までに対応しなかった場合は、その翌日(2021年10月1日)から免税販売を行うことはできなくなります。
また、電子化に先んじて、「輸出物品販売場の免税販売手続電子化に関する届出書」を事業者の納税地を所轄する税務署に提出しなければならないこととされています。
この届出書は施行日の半年前、2019年10月1日から提出することができ、提出後には税務署より免税店ごとの識別符号が通知されるようです。
※この識別符号が購入記録情報の一部となるため、施行日から電子化しようとする場合は、届出から通知までのある程度の期間を要することを考慮して、届出をする必要があると思われます。
この他にも適用要件や注意すべきことがあり、今後施行日に向けて順次様式など公表される予定です。
事業者にとっては電子化にあたり手間やコストがかかりそうで、とても拡充というイメージは湧かないですが、電子化の達成後は事業者、非居住者ともに手間が少なくなる見込みで、その意味での拡充といえそうです。
免税店になるための要件・手続き
免税店として認められるためには、免税店を経営しようとする事業者の納税地の所轄税務署から免税店ごとに許可を受けなければなりません。
また、許可を受けるためには、下記の要件を満たす必要があります。
・「輸出物品販売許可申請書」を事業者の納税地の所轄税務署に提出する。
・事業者が消費税課税事業者であること。
・事業者が国税を滞納していないこと。
・免税店の所在地が、非居住者の利用度が高いと認められる場所であること。
・免税販売手続に必要な人員を配置し、同手続を行うための設備を有すること。
※「免税販売手続に必要な人員」については、外国語を流暢に話せなくとも、パンフレット等を活用して非居住者に手続きを説明できればよく、「同手続を行うための設備」については、非居住者であることの確認や購入記録票の作成などのためだけに使用する特別なカウンター等を設置することまでは求めていないとされています。
2020年の東京オリンピックを控え、今回お話した免税店や民泊ビジネスなど外国人観光客を「おもてなし」する施策がこれからも整って行くと思われます。
このビッグチャンスをものにして日本がもっと元気になればいいですね。
最近はスマートフォンや携帯電話の利用が主流となってきており、固定電話の利用が少なくなっているようです。
固定電話に係る電話回線の利用を休止している企業もあるかと思います。
「電話加入権」は会計上、固定資産の範囲に含まれていますが、非減価償却資産に該当します。
非減価償却資産は、償却費を計上できない上、評価損の計上も原則認められていません。
電話加入権の取り扱い
電話加入権とは、NTT(日本電信電話株式会社)の固定電話契約者が、電話を利用できる権利です。
この電話加入権については、会計上、下記のように取り扱います。
電話加入権は、譲渡できる権利ですが、時間の経過で価値が減少するものではないため、会計上は減価償却をすることができない「無形固定資産」として計上します。
今のご時世では、ほとんど無価値だと思われていますが、価値が無いからといって償却をすることはできないため、購入時に資産の部に計上した金額が半永久的に残ってしまいます。
通常、資産というのは評価損が認められていますが、電話加入権については認められていません。
その理由は、電話加入権を保有している企業が多いため、減損処理を認めてしまうと、国税収入に影響を及ぼすためとも言われています。
評価損の検討
電話加入権とは、電話回線を利用する場合に必要な権利であり、施設設置負担金を支払う事で発生します。
施設設置負担金「電話加入権」の価額は、現在36000円程度です。
中古市場では、数千円程度で取引されることもあり、その価値は大幅に下落しているのが現状です。
電話回線が1年以上利用休止(遊休)状態にあれば、法人税法上、固定資産の評価損の計上が認められる「物損等の事実」のうち下記<2>の事実に該当し、評価損の計上が認められそうなものです。
<固定資産の評価損の計上事由>
<1>災害により著しく損傷したこと
<2>1年以上にわたり遊休状態にあること
<3>その本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと
<4>資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
この場合に、中古市場における電話加入権の下落は、インターネット回線の普及等に伴うものであり、会社が1年以上利用休止していたことで、その価値が下落したわけではありません。
以上より、電話加入権の価額の下落は、固定資産の評価損の計上が認められる「物損等の事実」のいずれにも該当しないことになります。
電話加入権の除却損については、取扱い等で示されていないことから、電話加入権の利用契約を解約したとしても、除却損の計上が認められるのか疑問視されることもあります。
しかし、利用契約の解約に伴い、電話加入権という権利は消滅しており、その消滅したはずの権利が、引き続き資産の部に計上されていることの方が問題ですので、電話加入権が消滅したのであれば、その解約の事実が生じた事業年度に除却損を計上します。
相続税評価
会計上の処理については、上記でお話しした通りとなりますが、次は相続税の評価についてみていきましょう。
電話加入権の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところにより評価します。
<1>取引相場のある電話加入権の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
<2> <1>に掲げる電話加入権以外の電話加入権の価額は、売買実例価額等を基として、電話取扱局ごとに国税局長の定める標準価額によって評価する。
なお、平成29年分の大阪府における電話加入権の標準価額は、1回線当たり1500円となっています。
また、特殊な番号(1番から10番まで若しくは100番のような呼称しやすい番号又は42番、4989番のような誰もがいやがる番号をいう。)や上記の方法で評価することが不適当と認められる電話加入権の価額については、上記の方法で評価した価額を基とし、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して、適宜増減した価額によって評価します。
「エビデンス」とは「根拠、証拠」という意味で税務調査においてはほぼ「エビデンス」の確認と言ってもいいのではないかという程重要です。
例えば得意先を料亭で接待した場合は、領収書、接待した相手先名等のエビデンスが必様です。エビデンスがなくて帳簿に接待飲食代として5万円を記載しても認められない可能性が高いです。
飲食費のエビデンスとしては領収書は当然として稟議書、精算書等も併用する事もあります。領収書のみの場合は裏面に接待した相手先名、参加者名(○○部長他○名でも可)参加人数を記載しておきます。
商品券等を一度に購入して得意先にお礼などで渡す場合もいつ、誰に、どれだけを渡したかも記録をつけておいた方が良いです。(在庫管理も必要)
交際費の隣接費用として福利厚生費や会議費等がありますがこちらも福利厚生費であれば参加者名(一部の従業員であったり高額であると交際費とされる場合もあります。)、
福利厚生の目的(例えば慰労会等)も明確にしておきます。
会議費であれば会議内容の議事録等もあると良いでしょう。
先日決算にあたり不良在庫を処分しようと思うと相談を受けました。
不良在庫の処分については廃棄をした棚卸資産のリスト(商品名・購入時期・購入金額)廃棄直前の写真(倉庫等で日付入りの写真)廃棄業者への引渡し時の写真(トラックに積み込んだ日付入りの写真)廃棄業者の請求書、稟議書等があると良いでしょう。
写真は撮り忘れるかもしれませんができる限りの証拠を整えておいた方が良いです。
売れなくなった商品を処分するのにお金も手間もかかるので、早めに見切りをつけて安売りしてしまった方が良いかもしれません。
不良在庫と同様にすでに使っていないような備品等(固定資産)の処分をする場合、実際に廃棄する場合は前述の棚卸資産の処分と同様でよいですが有姿除却(実際に処分せずに現状の姿のまま除却する事)の場合は将来的に再使用される可能性がないという事を客観的に立証できるエビデンスの作成が必要です。
除却の稟議書や場合によっては取締役会の議事録も保管しておくべきでしょう。
貸倒損失についてもエビデンスが非常に重要になってきます。
貸倒損失については納税者が貸倒の事実があった事を立証する責任があります。
実務上多いのは「書面による債務免除」ではないでしょうか。
書面により債務免除をした場合は、債務免除に至った経緯を記した稟議書、取締役会議事録、督促の記録、内容証明郵便等を保管しておきます。
以上ほんの少しの例ですがエビデンスの重要性がお分かり頂けましたでしょうか。
骨董屋などで稀に豊臣秀吉が使った茶碗などが売られていることがあるようですがこれもエビデンスがしっかりと整えられていれば数千円ではなく非常に高額な価格で取引がされた事でしょう。
中小企業向け租税特別措置法の要件の見直し
中小企業に対する優遇措置は、中小法人等に対するものと中小企業者等に対するものに大別されますが、判定対象となる法人の資本金が1億円以下かどうかで判定を行ってきました。そこで大企業並みの所得がある法人でも、資本金を1億円以下にすることにより中小企業向けの優遇措置を受けることが可能であったため、本来の趣旨を踏まえて適用要件の見直しが行われました。
1.適用時期
この改正は、H31年4月1日以後開始事業年度から適用されます。
2.内容
その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得の金額の合計額をその事業年度の各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が15億円を超える事業年度は、特例を適用することが出来ません。
3.除外される措置
租税特別措置法上に規定されている優遇措置の一部について適用が受けられなくなります。
中小法人等に対する主な優遇措置
1.法人税率の軽減
法人税の税率は原則として23.4%です。
ただし、中小法人については、年800万円以下の所得について、19%の軽減税率を適用
2.特定同族会社の特別税率の不適用
一定の同族会社が一定額以上の内部留保をした場合に課される特別税率
3.貸倒引当金の損金算入
その法人の業種にかかわらず、繰入限度額に達するまでの金額を損金算入
4.交際費等の損金不算入制度
法人が支出した交際費等は原則として、全額損金の額に算入しないこととされています。
中小法人は、年800万円以下の交際費等は全額損金算入が認められています。
5.欠損金の繰越控除
青色申告書を提出した事業年度において欠損金が生じた場合には、その事業年度の後の事業年度以降に繰越して、後の事業年度の所得から欠損金を控除することで、法人税の負担を軽減できます。
6.欠損金の繰戻還付
青色申告書を提出する事業年度に欠損金が生じた場合、翌事業年度以降に繰越すのではなく、欠損金が生じた事業年度開始の日の前1年以内に開始した事業年度の所得金額に繰戻し、既に納めた法人税から、欠損金の分だけ還付を受けることができます。
※中小法人等とは、次のいずれかに該当する法人等をいいます。
1. 普通法人のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの
(以下①②に掲げる法人に該当するものを除く)又は資本若しくは出資を有しないもの(保険業法 に規定する相互会社を除く。)
①大法人(次に掲げる法人をいう。以下同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人
イ 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
ロ 相互会社(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)
②普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人
2. 公益法人等又は協同組合等
3. 人格のない社団等
中小企業者等に対する主な優遇措置
1.中小企業者等に対する軽減税率
中小企業者等は、年800万円以下の所得について、15%の税率を適用
2.中小企業技術基盤強化税制
青色申告書を提出する中小企業等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度の税額控除割合等を優遇。
3.中小企業投資促進税制
青色申告書を提出する中小企業等が一定の機械装置等の対象設備を取得や製作等した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用(税額控除は、資本金3,000万円以下の法人)できるものです。
4.少額減価償却資産の取得価額の損金算入
青色申告書を提出する中小企業者等は、取得価額が30万円未満の減価償却資産(少額減価償却資産)であれば、即時にその全額を損金処理することができます。(合計300万円まで)
5.貸倒引当金の損金算入
中小企業者等の貸倒引当金の特例制度に係る中小法人に対する法定繰入率の選択を認める措置
※ 中小企業者
①資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人
(下記に該当する法人を除く)
イ、大規模法人(資本金等が1億円超の法人又は常時使用する従業員の数が1,000人超の法人)に発行済み株式等の総数等の1/2以上を所有されている法人
ロ.2以上の大規模法人に発行済み株式等の総数等の2/3以上を所有されている法人
②資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
措置法は適用期限があるため、今後の税制改正により延長された場合は、適用要件等を再度確認することが必要です。
「災害に関する税制上の措置(以下、「災害税制」とします)」をご紹介して参ります。
なお、災害税制は非常に広範にわたるため、一部かつ大まかなご説明にとどまります。
災害とは
災害により被害を受けられた皆様におかれましては、心からお見舞い申し上げます。
災害税制を検討する際に注意するべき点は、各措置ごとに適用要件となる災害の範囲が異なることです。
まず、「災害」という場合には、次のものをいいます。
(1)震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火、その他自然現象の異変による災害
(2)鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害
(3)害虫、害獣その他の生物による異常な災害
また、「災害等」という場合には、次のものも含まれます。
(4)盗難
(5)横領
なお、詐欺や恐喝は、残念ながら含まれません。
さらに「自然災害」と言う場合は、上記(1)のうち、「被災者生活再建支援法」の適用を受ける災害をいいます。
加えて「特定非常災害」という場合もあり、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいいます。
なお、本稿作成時点で指定されている特定非常災害は下記の4件です。
・1995(平成7)年 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
・2004(平成16)年 新潟県中越地震(新潟県中越大震災)
・2011(平成23)年 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
・2016(平成28)年 熊本地震
災害にあったからといって、全ての災害税制が受けられるわけではないということですね。
災害税制の概要
災害にあった場合、次の各種措置を受けることができます。
(1)申告などの期限の延長・納税の猶予
① 災害等の理由により申告・納付などをその期限までにできないときは、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲でその期限を延長することができます。届出書や申請書等の提出期限も同様に延長することができます。
② 災害により相当な損失を受けたことにより、その復旧に必要な資金の借入れのために使用する場合には、納税証明書の交付手数料は不要です。
③ 災害等により財産に相当の損失を受けたときは、所轄税務署長に申請をすることによって納税の猶予を受けることができます。
(2)所得税の全部又は一部の軽減
① 災害により住宅や家財などに損害を受けた場合は、確定申告を行うことで所得税法の雑損控除又は災害減免法の適用を受けることができます。
② 住宅ローン等で住宅用家屋の新築等をした場合には、一定の要件を満たすことにより、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることができますが、災害により住宅用家屋が被害を受けた場合には、適用期間や重複適用の特例を受けることができます。
(3)災害により被害を受けた場合の法人税の特例
① 災害のあった日から1年以内に終了する事業年度において、災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度開始の日前1年(青色申告書の場合には2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、繰戻し還付を請求することができます。
② 災害のあった日から6月以内に終了する中間期間において、災害損失金額がある場合には、仮決算の中間申告において、控除しきれなかった所得税額の還付を受けることができます。
③ 特定非常災害として指定された災害については、発生日から同日の翌日以後5年を経過する日までの期間内に、被災代替資産等の取得等をして事業の用に供した場合には、特別償却をすることができます。
(4)消費税簡易課税制度の適用(不適用)に関する特例
災害等が生じたことにより被害を受けた事業者が、当該被害を受けたことにより、消費税簡易課税制度の適用を受けることが必要となった場合、又は受けることの必要がなくなった場合には、通常は適用を受ける課税期間開始の日の前日までに届出書を提出しなければなりませんが、税務署長の承認を受けることにより、当該災害等の生じた日の属する課税期間から、消費税簡易課税制度の適用を受けること、又はやめることができます。
このほかにも相続税・贈与税、登録免許税、自動車重量税や印紙税などについても災害税制が設けられています。
災害税制の適用を受けるには
上記の災害税制の適用を受けるには、ほとんど全ての措置において確定申告書や中間申告書、申請書の提出が必要になります。
提出期限については、通常の提出期限経過後でも適用できるものもありますが全部ではなく、また、「災害等がやんだ日から2月以内」という具合に、いつまでも待ってくれるという訳にはいきません。
さらに、り災証明書や登記簿謄本その他一定の書類の添付が必要になる場合もありますので、適用に当たっては、くれぐれも注意が必要です。
今回、災害税制についてご紹介させて頂きましたが、ほんの一部です。詳細については、最寄りの税務署や税理士等にご相談ください。
災害は被災者に物理的・精神的に多大な損害を与えます。また、被災者のご家族・ご親族にも大きな影響を及ぼします。
税制上の優遇措置以外にも多くの支援策が講じられていますが、それどころではないという方がほとんどだと存じます。そんな時、税理士が少しでもお役に立てれば幸甚です。