税務お役立ち情報

源泉所得税について

源泉徴収制度

そもそも源泉徴収制度とは、
①給与や利子、配当などの特定の所得を支払う者が、
②その所得を支払う際、所定の方法により所得税額を計算し、
③支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付する
というものです。

 

国側があらかじめ税収を確保することを目的とした賢い税金徴収方法です。

なお、平成25年1月1日から平成49年(西暦2037年)12月31日までの間に生じる所得については所得税に復興特別所得税を併せて徴収し納付することとなっています。
以下、復興特別所得税は所得税に含まれるものとしてお読みください。

 

納税地

預かった源泉徴収税額は納税地の所轄税務署に納付することになります。この場合の納税地は、支払事務を取り扱う事務所や事業所等のその支払日の所在地とされています(所法17)。
例えば、本店の使用人等の給与等の支払事務はその本店で取り扱い、支店の使用人等の給与等の支払事務はその支店で取り扱っている場合には、その支払事務を取り扱っている本店や支店のそれぞれの所在地が、その支払う給与の源泉所得税の納税地となり、その所轄税務署に納付することになります。

 

納付期限

源泉徴収をした所得税の納付期限は、原則として支払対象月の翌月10日までに納付しなければなりません(所法181ほか)。
給与所得、税理士等の報酬については納期限の特例があり、届出等所定の要件を満たせば半年に一度納めればよいことになっています。

 

遅れると不納付加算税、延滞税を支払わなければいけません。

 

源泉徴収制度を理解し正しく処理

先方から送られてきた請求書に「源泉所得税」と記載があり、取引先に支払う金額がいくらなのか、納付書に記載して税務署に支払う金額がいくらなのかが明らかな場合は問題ないでしょう。

 

しかし、先方が請求書に源泉徴収税額を記載していない場合も考えられます。

支払者がしっかり源泉徴収制度を理解しておらず、その支払につき源泉徴収をしていない場合には問題があります。税務調査の際、その支払内容が「源泉徴収の対象」だとの指摘を受け、納税をしなければいけないケースがあるのです。

 

その場合には、既に相手に源泉徴収税額を支払ってしまっているので指摘を受けてから税務署に払う分が発生します。もちろん、その取引先から支払い済みの源泉所得税額分を返してもらわないと支払いが二重となってしまいます。
実際には回収することが出来ないケースも想定されるので事務手続きも煩雑となるでしょう。

 

支払内容をしっかり確認したうえで源泉徴収の対象となるか否かを確認し、報酬・料金を支払うよう気を付けましょう。

 

源泉徴収の対象となる支払

源泉徴収の対象となるものは上記に記載したもの以外にも当てはまるものがありますので、ここでは実務上よく出てくるものを列挙しておきます。

 

支払相手が居住者(国内に住所を有する個人又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人)については次の(1)から(8)までです。

 

(1)原稿料、デザイン料、講演料、放送謝金、工業所有権の使用料、技芸・スポーツ・知識等の教授・指導料など
(2)弁護士、公認会計士、税理士等の報酬・料金
(3)社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬
(4)外交員、集金人、電力量計の検針人、プロ野球の選手、プロサッカーの選手等の報酬・料金
(5)芸能、ラジオ放送及びテレビジョン放送の出演、演出等の報酬・料金並びに芸能人の役務提供事業を行う者が支払を受けるその役務の提供に関する報酬・料金
(6)バー・キャバレー等のホステス、バンケットホステス・コンパニオン等の報酬・料金
(7)使用人を雇用するための支度金等の契約金
(8)事業の広告宣伝のための賞金及び馬主が受ける競馬の賞金

 

IT系企業では原稿料、デザイン料など、飲食店ではホステス等、医師では診療報酬など、事業者であれば弁護士・税理士等の報酬は頻繁に出てくる支払かと思います。

 

また、源泉徴収税額にも注意が必要です。
支払内容によって計算方法も異なり、一度に支払う金額が100万円を超える場合にはその超える金額については税率が上がるものもあります。

 

非居住者に対して支払うもの、内国法人、外国法人に対して支払うものについても源泉徴収の対象となる支払は列挙されています。
支払相手が居住者なのか、非居住者なのかも確認しないと源泉所得税の納付漏れとなってしまうケースもありますので突発的な取引はその都度税理士等に確認するとよいでしょう。

 

以上、源泉徴収制度について特に注意すべき点をおさらいさせていただきました。給与、賞与については今回記載しませんでしたが賞与の源泉徴収税額、日額表で源泉徴収を行う場合等、通常出てこない支払でも注意すべき点はまだまだありますので支払の都度注意しながら源泉徴収事務を行う必要があります。

 

不明点は最寄りの税理士に相談して納付漏れとならないよう気を付けましょう。

扶養控除に必要な書類と提出

 

前回の国外居住親族に係る扶養控除の概要の続きです。

 

=「送金関係書類」とは=

 

「送金関係書類」とは、次の書類で、居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための資金を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。

 

A 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払いしたことを明らかにする書類

B いわゆるクレジットカード発行会社の書類又は写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入しこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領した、又は受領することとなることを明らかにする書類

 

(注)

1.送金関係書類については、原本に限らずその写しも送金関係書類として取り扱うことができます。

 

2.送金関係書類には、具体的には次のような書類が該当します。

1) 外国送金依頼書の控え

※ その年において送金した外国送金依頼書の控え(全て)が必要になります。

※ 同一の国外居住親族への送金が3回以上となる場合には、一定の事項を記載した明細書の提出と各国外居住親族のその年最初と最後に送金等した際の「送金関係書類」の提出又は提示をすることにより、それ以外の「送金関係書類」の提出又は提示を省略することができます。

 

2) クレジットカードのご利用明細書

※ クレジットカードの利用日の年分が送金関係書類となります。

 

3.国外居住親族が複数いる場合には、送金関係書類は扶養控除等を適用する国外居住親族の各人ごとに必要となります。

※ 代表者の方へまとめて送金する場合は代表者のみの「送金関係書類」に該当し、その代表者の方以外の国外居住親族に係る「送金関係書類」には該当しないことになります。

 

 

=「親族関係書類」及び「送金関係書類」の提出(提示)の時期=

 

1. 国外居住親族に係る「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する者は、その申告書を給与等の支払者に提出する際に「親族関係書類」を併せて提出し又は提示し、年末調整を行う際に給与等の支払者に「送金関係書類」を提出又は提示する必要があります。

 

2. 国外居住親族に係る「従たる給与についての扶養控除等申告書」又は「公的年金等の受給者の扶養控除等申告書」を提出する者は、これらの申告書を給与等又は公的年金等の支払者に提出する際に「親族関係書類」を併せて提出又は提示する必要があります。

(注)

「送金関係書類」を上記の支払者に提出(提示)する必要はありませんが、確定申告を行う際には、確定申告書に添付するか、又は確定申告書を提出する際に提示する必要があります。

 

3. 年末調整の際に、非居住者である配偶者に係る「給与所得者の配偶者特別控除申告書」を提出する者は、この申告書を給与等の支払者に提出する際に「親族関係書類」と「送金関係書類」を併せて提出又は提示する必要があります。

 

 

今回の改正は 一部の国外居住親族が異常な数になっているケースが散見されたことから、取り扱いが厳格になったものと考えられます。

今年も引き続き、国外居住親族を扶養控除等する場合又は新たに国外居住親族を扶養控除等する場合には「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要になります。「親族関係書類」は入手できると思いますが、「送金関係書類」は年内の証明が必要になります。

 

国外居住親族に係る扶養控除の概要と親族関係書類

 

=概要=

 

平成27年度の税制改正により、所得税法等の一部が改正され、給与等又は公的年金等の源泉徴収及び給与等の年末調整において、非居住者である親族(以下「国外居住親族等」といいます。)に係る扶養控除、配偶者控除、障害者控除又は配偶者特別控除(以下「扶養控除等」といいます。)の適用を受ける居住者は、その国外居住親族に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」(これらの書類が外国語で作成されている場合には、その翻訳文を含みます。)を源泉徴収義務者に提出し、又は提示しなければならないことされました。

 

この改正は平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき給与等及び公的年金等について適用されます。

 

(注) 確定申告において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合にも「親族関係書類」及び「送金関係書類」を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示しなければならないこととなります。ただし、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収又は給与等の年末調整の際に源泉徴収義務者に提出し、又は提示したこれらの書類については、確定申告書に添付又は提示は要しないこととされています。

 

 

=「親族関係書類」とは=

 

「親族関係書類」とは、次のA又はBのいずれかの書類で、国外居住親族が居住者の親族であることを証するものをいいます。

A 戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し

B 外国政府又は外国の地方公共団体(以下「外国政府等」といいます。)が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載のあるものに限ります。)

 

(注)

1.親族関係書類は、国外居住親族の旅券の写しを除き、原本の提出又は提示が必要です。

 

2.Bの外国政府等が発行した書類は、例えば、次のような書類が該当します。

・戸籍謄本 ・出生証明書 ・婚姻証明書

※ 外国語で作成されてい場合は翻訳文も提出又は提示することとされています。

 

3.16歳未満の非居住者である扶養親族(扶養控除の対象とならない扶養親族)であっても障害者控除を受ける場合には、親族関係書類及び送金関係書類の提出又は提示が必要です。

 

年末調整をする理由

 

年末調整とは、給与の支払者がその年最後に給与の支払をする際各月で源泉徴収をした税額の合計額と、その年中の給与の支給総額について納付すべき年税額とを比較して過不足額の精算を行うことをいいます。

 

なぜ徴収された税額と納付すべき税額が合わないかは下記の理由によるため各月の税額がゼロでない限り合わない確率はほぼ100%といえるでしょう。

 

A その年の中途で控除対象扶養親族の数などに異動があること。

 

B 月額表などの税額表の作り方が簡略化されていること(老人控除対象配偶者や老人扶養親族の割増控除などは考慮せず、また、障害者、寡婦(夫)等の控除は、通常の控除対象扶養親族がそれぞれ1人多くいるものとして税額表を適用することになっていることなど)。

 

C 配偶者特別控除や生命保険料控除、地震保険料控除などは、年末調整の際に控除することになっていること。

 

D 賞与の源泉徴収税率は、賞与が年間を通じて給与の5か月分支払われるものとして算出されていること。

 

E 年末調整の際に税額控除((特定増改築等)住宅借入金等特別控除)を行うこと。

賞与に対する源泉徴収について

 

まず通常の場合には皆さんもご存じのように、次のように計算しますよね。

イ 前月の給与から社会保険料等を差し引きます。
ロ イの金額と扶養親族等の数を【賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表】に当てはめて税率(賞与の金額に乗ずべき率)を求めます。
ハ (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(ロ)の税率

この金額が、賞与から源泉徴収する税額になります。

 

 

さて次に,ものすごく多額の賞与支給となった場合や(こんな支給があったらうれしいのですが)前月に給与の支払いがない場合には【月額表】を使って次のように計算します。

(1) 前月の給与の金額(社会保険料等を差し引いた金額)の10倍を超える賞与
(社会保険料等を差し引いた金額)を支払う場合

イ (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
ロ イ+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
ハ ロの金額を【月額表】に当てはめて税額を求める。
ニ ハ-(前月の給与に対する源泉徴収税額)
ホ ニ×6

この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。

 

(注)賞与の計算期間が半年を超える場合には、賞与から社会保険料等を差し引い
た金額を12で除して、同じ方法で計算します。
そして、求めた金額を12倍したものが源泉徴収する税額になります。

 

(2)前月に給与の支払いがない場合

イ (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
ロ イの金額を【月額表】に当てはめて税額を求める。
ハ ロ×6

この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。

 

(注)賞与の計算期間が半年を超える場合には、賞与から社会保険料等を差し引いた金額を12で除して、同じ方法で計算します。
そして、求めた金額を12倍したものが源泉徴収する税額になります。

 

給与の支給の状況によって税額にズレは生じますが、最終的には年末調整や確定申告によって税額が確定されることは、皆さんご承知かと思います。

 

 

最近は事前確定届出給与を提出される会社も増えているようですので、このような支給となる場合もあるのではないでしょうか。

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